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【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第21章 僕の初恋をキミに教えてあげる


がた、という音。ぴくりと反応して耳を澄ます。暗い考えと静かな部屋が明るくなる気配。
すぐに鍵が開けられてガサガサビニールの音を立てながら元気な声が部屋に響いた。

「ただいマトリックス!」

やっと狭い部屋で騒がしいいつもの空間になった。ホッとしてひとり食卓で小さく笑う。

「ハルカー、ハルカハルカハルカ、ハルカ~っ!おーいハルカやーい!悟君の帰還ぞ、玄関まで集合!」

ただ部屋に帰っただけでこうもうるさくなるとは。まるで酔っ払いのテンションみたい。下戸なのにさあ。
やれやれ、と椅子を引きずって立ち上がり、すたすたと玄関方面へと向かう。上下黒尽くめにアイマスクの悟がビニール袋を片手にぶら下げている。私が見えると空いた手で早く、と手招いてる。

『何、玄関でそう騒いで。塩でも撒いて欲しいの?』
「もうっ、いくら傑が袈裟着てるからって葬式帰りじゃないぞー?……ほらっ!」

んっ!と突き出すのはビニール袋。両手でビニールの中を覗き込めばなにやら紙箱っぽいものが見える。
そのビニール袋を受け取って悟を見上げた。にこにことご機嫌で稽古の時のあの様子が無かったみたいで。
問題は解決したのかな、傑と話でもして。

「そのお土産はクリームホーンです。帰りに通ったお店で見かけてね、美味しそうだから買ってきたよ!一緒に食べようねっ!」
『おっ、さんきゅ!』

身軽になった悟は玄関で両手を広げた。

「あと忘れちゃいけない、奥さんからのただいまのハグ&キッス!」
『あーはいはい…、』

せっかく渡してくれたけれど彼と私に押しつぶされて残念な事にならないようにと一度床にガサ、とお土産を置き、その胸に飛びつく。広げていた手は私の背に回されてぎゅうっとしっかり抱え込まれて、さっきまでの寂しい、曇天のような気持ちが一気に晴れていく。抱きついた彼から伝わる体温が幸せそのものみたいな。じわじわと私に移ってくる幸福感。
もぞっ、と顔を上げれば顔を上げるのを待ってましたと言わんばかりの悟の顔。目元は見えずとも口角を上げにこっ!と笑った後に背に回されているうちの片手が髪をかきあげるように、後頭部をしっかりと押さえて食らいつくようなキスが降ってくる。
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