第20章 星空の下で愛を語らう
「うん、手錠と鍵。"魂の交差する手錠"……なんだってサ!命あるふたつのものが手錠で繋がれると互いの魂が入れ替わるんだって、あっ」
パキン……、
良い音をさせて折れた取っ手。悟の視線が手元の取っ手から私に移る。
全く何やってんだ…と見ているうちににっこりと笑って部屋の壁際にぽいっ、と悟は折れた金庫の取っ手を投げた。遠くではない、近くの見えない所からカラーン、と金属特有の高音が聴こえる。
はははっ…と苦笑いしつつ数歩、悟の側に寄って腕を組んで金庫と対面してしゃがむ悟を見た。
『ここに破壊神現る……なにやってんの!』
「やっちゃったー☆てへぺろっ!
でも放棄された廃屋だし怒られないし…良いっしょ。これからもっと破壊するからねー」
悟は立ち上がり、側の私に手を触れて「ちょっとこの辺までは下がってて!」と数歩分下がらせる悟。じっと金庫をみたままに。これはやらかしそうな予感。悟、悟!と呼んで彼を振り返らせた。
『開けられないなら壊すのは仕方ないとして。回収するものの事を考えてしなよ?呪物も壊して、僕またなんかやっちゃいましたか?は洒落にならないからね?』
そういう未来が見えてしまうのは普段からの行いを見ているからか。最終的にドリフのBGMが鳴って駄目だこりゃ、でここを立ち去るオチ。その場合はこの小屋が全壊になるんだけれど。
やりすぎないかとはらはらする私を見て、悟は余裕そうに手を振る。
「大丈夫大丈夫、僕、手加減も出来る最強だから!それに万が一呪物を壊しても良いのよ、回収もしくは破壊、だから」
『頼むからこの小屋全壊は止めてね?』
「おっ?フリかな?」
『フリじゃねえよ~?』
少しふざけた後に悟を見ていれば、私を見ていた顔は金庫へと向かう。その横顔から金庫へと視線を移せば金庫は、扉がギギッ、と明らかに軋んでる音を立ててる。
ガコ、と音を立て金庫全体が左右に小刻みに揺れ、扉だけがこちら側にお辞儀するようにむしれ、そのまま捻じれ……本体とつなぐ丁番のネジが吹き飛びながら、床に完全に捻じれた扉だったものがゴトンッ!と大きな音を立てて倒れた。
『……おお~…流石最強…』
ただ部屋がボロボロで外と変わらないような環境だから、吹き込んだ砂埃がさっきの衝撃で舞う。煙っぽくて咳き込んだりくしゃみをしたりしていれば悟に手を掴まれると砂煙っぽさが消えた。