第3章 呪術を使いこなす事
だから、無意識で言わない限り、意識的には言えない。
ぺたぺたと開放してくれない手を両手でまさぐりながら、手首を掴んだ。
「お、物理で来たの?僕は結構しぶといぞ~?最強だもん」
『目が見えないと見るものも見れないんですけれど?勉強中でしたしー?』
「心の目で見たら?」
『そういうのに目覚める一族じゃないから、多分』
掴んで離そうにもしっかりと私の目元を塞いでびくともしない。
フフッ、と笑い声が零れたのが聴こえてきた。
「僕は鍛えてるからね、それに呪力で肉体強化も出来るんだよ。もしキミも出来るならやってごらん?」
知らない。分からない。誰も教えてくれない。だからこそ、んなもの使えるかって話。
上にも下にも、左右両側に引っ張ろうにも離してくれない悟はそのまま会話を続けている。私の視界は変わらずに暗い。
「このままでここにキミが居る間の話をするね。
勉強しながらで良いからさぁ、術式で治療をする家入硝子っていう、僕の同級生ん所で時々呪術を使いに行って感覚掴んでいって欲しいんだ。何回かやっていけばハルカはきっと、コツが掴めるはずだよ。
それから、事務作業手伝ってあげてね。ちょっと手が足りないんだってさ!あと、毎日僕と体術のお稽古だよー、呪術師は呪術に頼りっきりじゃなくて、体も鍛えてなんぼだからね。
あとねあとね、聞きたいんだけれどね、」
執拗に続けているから手首から手を離し、メモも出来ないので聞くことを優先した。
『一度に言われてもメモも取れないんだけれど!……で、何を聞きたいって?』
「あー、うん。えっとねえ……」
言いよどむそれからが気になるわ。何かヤバイ自体でも起こったのかもしれない。家のキッチンの床の様に。
悟は小さくそれから、と繰り返した。超気になってきた。
「……僕の事、キミはどう思う?」
『どう、思う……?』
どう思うて。
ンな事言われてもなぁ、と抑える手の手首を掴んで下に力を入れると諦めてくれたのかようやく離れた。
目元が悟の手汗か、スースーする。
体をよじり、後ろの悟を振り返り、見上げた。
『28歳児?』
「七海に聞いてからその言い回しキミ、好きだねー…いや、そうじゃなくて!ホラ、好きとか嫌いとかあるじゃん?どっちの部類?ほらほら~言っちゃいなって」