第20章 星空の下で愛を語らう
『愛情一本チオビタでも飲んどけ~?……きっついハイオクだなあ、運転交換する?』
悟は首を横に振って「やだ!」と良い笑顔で返して早速ガチャガチャとギアをいじる。いよいよ出発の時が来たって事だねえ、お手並み拝見。
しかしこの不慣れな動きに心配が募り始めるんですが……?
「あ、あれ?」
やや焦る悟。ウヴン!と唸る車。なにやってんだい、ペーパードライバー!
せっかくはめ込んだシートベルトをかちゃ、と私は外した。選手交代の予感がしてるし。イエローカードですよ、悟選手、私ちょっと怖いんですが??
『本気で大丈夫?パーキングのまんまッスけど?冗談抜きで私不安なんだけど……』
朝から少し冷や汗をかいてる悟。この様子だとマジで久しぶりの運転だったんだろうと察したわ。きっと教習所以降とかそういうレベル、免許更新だけきっちりし続けて無事故のゴールド免許!って言ってるタイプだ…!
私が彼を覗き込むと目を泳がせた悟が顔だけこっちを向いた。
「いやあのね?確かドライブモードにしたつもりだったわけよ?そんでつもりのまんまでさ、それ忘れて出発進行だと思ってそれなりにアクセル踏んでも動かないからアレッ?と思って……。
ギアいじったっけ、ウヴンッ!唸っちゃって……もうウィリーさ」
『だるま屋ウィリーやめろ??』
ワゴン車にウィリーとかそう関係無いけれど。いやルパン辺りなら車でウィリーくらいは余裕でやってくれるかもしれないけれどさ、今運転に不慣れな悟にされたら式髪の全白髪化とか言わずに寿命縮まるわ。
サイドブレーキの存在も記憶から蘇らせつつ悟は車をなんとか発進させる。私も慌てて締め直したシートベルト。
彼の言う、寝てて良いよ、なんて今じゃゆめまぼろしですわ。怖くて寝てる場合じゃないんだよねー…この状況じゃあ……。
隣の不慣れな運転に少しばかり不安になりながらも任務を兼ねたキャンプデートへとワゴン車はようやく発進した。