第20章 星空の下で愛を語らう
その言葉を聞いて家入は呆れた。
普段は自分に舞い込んだ任務や面倒くさい事も学生に回したりして、強くするためには仕方のない事、厳しくすることも重要だ、などとのたまう男がここまでひとりの女を甘やかしている。
それは異常さを匂わせた歪んだ愛情。時折ハルカから相談を受ける時にも感じている、絶対に離れないという執着さ。独占欲。
「同じ一年にしては随分と贔屓目を使っているな。ハルカはそういう贔屓は喜ばない、クラスメイトにもさん付けはするな、とかアンタにも登校中は先生呼びするようなきっちりしたやつだよ?むしろそういう特別扱いは嫌がると思うけど?」
思わず鼻で五条を笑った。同期よりも彼女側を支援したいと家入は思っている、けれども五条はそんな家入の言葉は聞いていない。
口元に弧を描く男はより最悪な方向のシナリオを家入にチラつかせた。
「だろうねっ!身代わりの一族にしては好戦的な彼女だしね。でも、今は猶予を与えてるんだよ、硝子。
もし、次ハルカがまた死にかけたとする。そしたら僕はね……」
ふふ、と笑い「ハルカにも宣言してあるんだけれど」と勿体ぶるように五条は家入に話した。
その話を聞き、唖然としているうちに五条は医務室を去っていく。
ゆっくりとデスクに向かうも、すぐには仕事が再開出来ない家入。さっきの言葉がリフレインする。
"次死にかけたらハルカには学校を辞めて貰って家庭に入ってもらう。奥さんだからね、五条家と春日家の血を継ぐ子を作るのに専念して貰うよ。これは次死にかけたらこうねってハルカにも言ってある事だけどさ。
でも実際そんな事になってしまえばハルカは文句を言うだろうから、週の半分くらいは高専の医務室や事務の補助をやらせておくよ……こっちは彼女に言ってないから、硝子も彼女には内緒ね?"
「(ハルカにはそれが幸せな事だとは思わないけれど……)」