第20章 星空の下で愛を語らう
176.
医務室にて硝子の手伝いをしている。怪我の治療の為にじゃなくて今日は事務作業に近いもの。また、薬品の棚の清掃も一緒にしている。
文字の薄れてきたラベルを新しいものに張り替えて棚に戻しながら愚痴った。
『なーんか最近、一般教養の座学の授業が私だけ医務室や事務に回されてるような気がするんですよね』
「そう?こっちとしては助かるんだけれど」
カタ、と手に持っていた箱を置き、隣の棚をいじってる硝子の方をにこ、と笑いながら見る。
『なに、こっちは嫌いな数学を省けてラッキー!…なんですけれどね?』
「勉強はちゃんとしろ?」
棚に向き直り、所定の位置に戻しながら在庫のチェックをして。
『座学っても呪術関連についてはちゃんと受けてますよー。体術も基本的に負傷者が居ない限りは呼び出されないし。
ただ、それ以外の科目が潰れる事が多くて、しかも負傷者が居なくとも医務室。学生になる前のように何故か事務にも入る……確かに人手不足なのは分かるんですけど?そこがなんだか疑問で』
「………」
怪我人が出た、という連絡じゃなくて何時から医務室行って、とか悟だったり補助監督生からだったり連絡が来る。これには学生となる前の時に近いものを感じさせる。春日家についての勉強かつ呪術についてを慣れていく段階のような……あの頃を。
失敗したコピー用紙の裏側に棚の3段目の用具の名前を書いて、現在の個数を目で見て書き出していく。次は4段目の掃除とラベルの張り替えをしないと。
間違えないようにひとつひとつ丁寧に作業していると硝子がハルカ、と名前を呼んだ。
「そこまで察しが良いのなら、なんとなく分かってるんじゃないのか?」
『……』
硝子から視線を反らしていると、椅子のキャスターを転がす音。ギッ、と鳴った、硝子は座ってる。
私は作業する手を止め、一度手に持っていたバインダーとペンをデスクに置いた。そのまま、立ったままに座って脚を組む硝子を見る。
『多分、ですけど。夜蛾学長とかじゃなくて悟が関わっていそうな…とは思うんですけれど。硝子さんなんか知ってます?』