第3章 呪術を使いこなす事
口を尖らせながら、悟は七海を見ている。
……悟の方が後輩って言ったほうが合いそうなんだけれど。
「嫌だなぁ、ななみぃ~、僕らは恋人なんだって」
「………はい?正気で言ってます、それ?冗談でしょう。嫌がらせ以上のなにものでも無いですよ、その話」
七海の疑いの視線が、悟に向いてるのがここからでも見える。
その視線を受けながらも飄々とした態度で、親指で私を差している。
「マジマジ。ねー、ハルカー?」
同意を求める上擦った声に、詳細は言えない悔しさを込めつつも返事をした。
『趣味じゃないけど、残念ながら…』
「あ゛あ゛ん?」
『ちなみに、七海さん後輩とおっしゃってましたが、この人はおいくつなんですか?』
ウインカーを出して左に曲がる車。車窓からは歩道前で、信号待ちする人達が話をしていたり、携帯をいじったり各々がバラバラだけれど、ぽつんと1匹の呪いが通り過ぎる人を見ている。無害そうっちゃ無害そうだけれど。
ハンドルをまっすぐに戻した七海は前方をまっすぐに見て答える。
「私は27でこの人が28です」
『えっ、嘘でしょ……これが28歳?……私よりも5つも上の…、』
色々と考える。口を開いたら言葉が零れそう。
私が口元を抑えて居ると、振り返る28歳児。
「キミ、失礼な事考えてそうだね?」
『いやまさかそんな、28歳児だなんて口が裂けても言えな、』
「よーし、体術覚悟しとけよ?僕、本気出すから。天才で最強の本気の体術特別に味わうなんてラッキーだね?」
『ごめんなさいっ!』
私は頭を抱えるしか出来なかった。
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何日滞在するのか分からないけれど運び込んだ荷物を半分程片付けて、こじんまりとしたテーブル前の椅子を引く。食卓にも勉強机にもなる、本当に一人用って大きさだ。
そして座って机に広げた、割と近年の春日一族が書いたであろうボールペンで走らせてあるノートをぺら、と捲った。もう夕方、ちょっと見たら簡単なものでご飯にしよう。