第15章 4.形影相親
時は流れ、夕方。
街がオレンジ色に染まる時刻にスバルと静雄は道端でセルティと会う。
似顔絵描きを探しているとの事。
「あぁ、その似顔絵描きなら知ってるぜ」
タバコをふかす静雄がそう答えるとセルティは表情こそわからないが、少し嬉しいのだという感情がスバルにはわかった。
『一昨日くらいから南池袋公園に来ているんだな』
静雄が「ああそうだ」と答えるとセルティは期待に溢れた。
しかし長く探していたのか、疲れてもいそうだった。
「一緒に行ってやろうか。そんなんじゃ不便だろ」
静雄は顔を上げて迷うセルティに「な?」と押す。
スバルは何だかんだ、優しい静雄のことが大好きだ。
「スバルもいるし」
黒い服にヘルメットで喋らない女性と、平和島静雄(バーテン服に金髪サングラス)2人より女子高生のスバルがいるのは会話的に心強いということであろう。
そう時間が経たないうちに南池袋公園に到着した。
女子高生達が似顔絵を描いてもらっていたので、セルティの言っていた似顔絵描きはすぐにわかった。
「デュラハンを見たってのは本当か?」
静雄が質問をすると似顔絵描きのおじいさんは3人を見ると「本当だとも。私が若い頃アイルランドの山の中で見た。間違いなくこの目でな」と答えた。
スバルはセルティと同じような存在がいるのかもしれないと思い、思わず笑顔になる。
『首をなくしたとはどういう意味だ?』
セルティが聞くと笑いながら「そうじゃない」という。
「首がないんだ。首がどうしても決まらない」
どういうことだ、と3人で顔を見合わせると1冊のスケッチブックをカバンから出して見せてきた。
「女だった。それもひどく美しい女だった」
スケッチブックは全てのページにデュラハンと思われる女性が描かれており、抱えている首の部分が白く書き込まれていなかった。
その後似顔絵描きはデュラハンを見た時の話をし、首の容姿についてセルティが聞くと「それを口に出来たら絵にしようとは思わない」と言われてしまう。
「そう言えば前に妙な男が来て「この絵はこれで完璧」だと言うんだ。彼女は首がなくて良いんだと。変わった男だった」
静雄はその後似顔絵描きに質問をしていたが、セルティは男の話を聞いてから終始なにも言わなかった。
「それで、さっきもそのスケッチブックを見たいという女が来てな」
