第16章 見掛け倒し
「自分から辞めたのか、那須島に脅されたのか、学校が転校させたのかはわかんないけど。ま、なんかあったら俺と帝人とあと一応るいも。なあ?」
一応にるいが入ったのは折原臨也の影がちらついたのか、るいの恰好からくるものなのかは定かではなかった。
そう言われるとスバルも「私も私も!」と笑う。
「状況がいまいち呑み込めないけど、僕にできることはなんでもするよ」
思ったより事は大きくてピンときていなさそうな帝人はふわっとした事を言うと「こういう時は僕にできないことだろうが、愛の力でやってみせるよ。くらいの事は言ってのけないと男じゃないぜ」と正臣が煽る。
矛盾であることを追求すると正臣はノリだから。と軽く言う。
「それよりこの前のいじめてた子達、同中なんでしょ?」
帝人は先日の一件についての話を始めた。スバルとるいは一気に心臓が跳ね上がり、どうか魔法少女について触れてくれるなと心の中で祈る。
「中学の時は実力のある子に助けられてて、その子がいなくなった途端に昔のやつらがまた来た、と」
それは杏里の言ういなくなった友人の事らしく、帝人が自分たちのクラスの張間美香のことかと聞くと杏里はノートに貼っている2人で撮ったプリクラを見せてくれる。
「美香さんは学校には欠席ってことになぅってますけど、就学式の前から一度も家に帰っていないんです」
そのプリクラは一見仲が良さそうに見えるものだが、張間美香はノリノリなのに対して杏里は棒立ちだったりと関係性が垣間見えるものだった。
「警察沙汰じゃん。やばくない」
やばい話からさらにやばい話が出てきて杏里以外の4人はただただ驚く。
「私の携帯と張間さんの家には連絡が入っているんです。ちょっと傷心旅行に行ってます、気にしないでって…」
スバルは思う。中学を卒業したばかりの子供が1人の経済力や行動力でこれだけ長い間出ているのはおかしい、と。
「傷心旅行?」と聞き返す。すぐに考え付いたのは恋愛沙汰であろう。
「あの、驚かないで聞いてくれますか?」
驚かないかどうかと聞かれると今まできいた話は驚くものだったので「いや大丈夫」とスバルもるいも答える。
「この数日で大抵のことには驚かなくなったから」
そう答える帝人も、この池袋でなにか経験したのだろう。どんとこい、の姿勢で次の言葉を待つ。
「張間さんは、ストーカーなんです」
