第15章 4.形影相親
本来ならセルティ・ストゥルルソンという紆余曲折を経て池袋にやってきた彼女の話をすべきなのだろうが、恐らくそれは必要無いのだろう。
その代わりと言っては何だが、この世界において「騎士辺るる子」と呼ばれる人物について述べるのが適切だ。
街に出たるる子の後ろにやってきたのは青いフードを被った1人の男性。
るる子の自宅から一緒に着いてきている手下の少女がそれに気づいて男性を追い払おうとするが、るる子は必要ないと言うように手を振る。
「どうして████…そうね、ここの言葉で言うなら「ジェイス」と発音するのが正しいかしら。何故「ここ」に?「███」にいるはずでしょう?」
るる子は歩きながら並走してきた「ジェイス」と呼ばれる男性に向けて離す。
「この世界で観測した異常は1つだ。なぜ速く解決し、次の次元に渡ろうとしない」
ジェイスと呼ばれる男はるる子に対して「速く仕事が終わる見込みがあるのに、なぜ終わらせない。先が詰まっているんだぞ」と圧をかける為にやってきた様子だった。
「この池袋ではその対象は都市伝説として姿を表して居るようです。しかしここにはどうしてもそれだけを取り除いても他にも潜んでいるのも感じます」
るる子はこの世界の人間、またスバルの居た世界の人間でもなく全く別の所からやってきた人間であった。
そこではるる子は特別な次元を移動できる「プレインズウォーク」力を持っており、様々な世界へ行って本来その世界では有り得ないトラブルを解決する仕事をしていた。
魔法の存在しない世界に魔法使いが出現してしまい、世界を壊してしまうなどという事があってはならないからだ。
池袋には本来交わるはずのない妖精が表の世界と関わりを持ってしまったと観測され、るる子はやってきたのだが。
「この街は異常です。人間にはおよそありえない力を持つ人間や、恐らく人に寄生する何かが潜んでいます」
ジェイスという男はその話を聞くと納得したのかるる子から離れていき、人の波に消えていく。
「…相変わらず暗い人ですね。こちらにも移りそう」
しばらく池袋の街を歩いていると、また違う人物がるる子の姿を見つけ、歩み寄る。
「やぁ、るる子さん。調子はどう?」
いかにも親しそうに話しかけてくる人物を見てるる子は少し面倒だなという顔を一瞬だけしてしまう。
「ご機嫌よう。折原さん」
