第12章 2.一虚一盈
「…何の用」
るいの用事を先に済まさせろとは言ったので、約束は守ろうと話を聞くことにした。
「君の苗字「折原」って言うんだね。珍しい名前だと思うんだけどさ~…」
じりじりとるいを逃さないように壁際に追いつ詰める。
この生徒の言いたいことは折原という珍しすぎる苗字、臨也の繋がりがあるんだろう?と言いたいのだろう。
「貴方にどんな理由があるかはわかりませんが、私は折原臨也と住んでいます」
恐らくこの生徒の聞きたかった答えであろう事を、どうせ隠しても追跡されてしまえばバレてしまう事なのでさらりと答えた。
「!住んでるって…!あいつは何を企んでるんだ…」
どうやらこの生徒は臨也になにかされているという事を予測したのだが、それはるいには関係の無いことだ。
「さあ、あの人は僕にとっては目的を達成するためのツールにすぎません。あの人の考えていることなんてわかりませんし」
るいにとって折原臨也と出会い、衣食住が手に入ったのは大変幸運だったとしか思っていない。
スバルと再会し、元の世界に帰還する為に利用させてもらおうと考えている。
「…なるほどな。危険なヤツじゃねえってことはわかった」
すると生徒は逃さないようにと逃げ道えお塞いでいた脚をどけてくれる。どうやら疑いはしていないようだ。
「改めて。俺は紀田正臣だ。よろしく」
さっきとは変わり、フランクな様子を見せてくれる。
一体、どの顔が紀田正臣の顔なのだろうか。
「ぼ…私は折原るい。るいって呼んでほしい」
紀田正臣は握手をしようと手を出してくれたので、るいは快くそれに答えて手を握る。
すると正臣はニヤリと笑う。
「やっぱ女じゃないな。顔が可愛すぎるから俺でも騙されかかたが、手は嘘をつけない!」
どうやら男というのを薄々思っていたようで、握手はそれの確認だったようだ。
「まあ…ちょっと事情というか隠してるわけではないから…。そうだよ」
でも綺麗じゃない?とくるっと回ってみせると正臣は「ぷっ」と吹き出し、笑い始めた。
「お前面白いやつだな!気に入ったよ」
先程の臨也の事を問い詰めてきた様子とは打って変わって、普通の男子高校生の顔になった正臣を見てるいも安心する。
「君も…、いや。正臣もね。これから同じクラスだし仲良くしてよ」
こうしてるいのこちらの世界において初めての友人ができた。
