第12章 2.一虚一盈
「紀田正臣です!ちょっと大人っぽく見えるかもしれないけど、中身は皆とおんなじ脆くて傷つきやすい…15歳です!」
るいは1-Bのクラスに決まった。スバルと同じクラスとまでは上手くいかなかったが、この学年のどこかに居ると思うだけで胸が高鳴る。
スバルの事を考えすぎて周りの人の自己紹介を全く聞いていなかったが、るいの番がやってきた。
「…お、折原るいと言います。宜しくお願いします」
簡単に済ませたが、なぜだか金髪の男子生徒がとても驚いた顔でこちらをみていた。
受験以降、周りから感じていた下心のような視線ではなく「驚愕」というのが混じった睨みつけの一種の目線だった。
(何だろう…僕の名前を聞いてから表情が変わったような…)
その後も学校初日のオリエンテーションが進行していくが、その男子生徒はるいの様子が気になるといったところだった。
次回の予定の話をし終わると記念すべき第一回のホームルームを終え、帰宅する生徒や友人の元へ急ぐ生徒と様々だ。
スバルを探すべく、るいはすぐに教室を出ようとするも手を掴まれてしまう。
「ちょーっと良いかな?学年代表の女の子と話したい事があるんだけど」
生徒はまるで女の子とお近づきになりたいから呼び止めたという風だが、「ちょっと裏来いや」的雰囲気を隠すことができていなかった。
この生徒にはこの生徒の事情があるのだろうとるいは思ったが、こちらにもこちらの都合があるのだ。
「悪いけど君に付き合っていられないんです。ぼ…私は忙しいんです」
手を放してもらおうと引くが、離してくれる気配がない。マジな様子だ。
「私の用事が済んだらいくらでも付き合ってあげますので、今はお引き取りください!」
るいが強い剣幕で言うと男子生徒の力が少し緩んだので手を振り払う。
(早く確認しないとスバルが帰ってしまうかもしれない!)
A組を急いで確認するも、どうやらB組よりも早くオリエンテーションが終了していたようで教室に残っているのは友人同士で話していて残っている人達だけだった。
「…この様子じゃ追いかけても、遅いか…」
そもそもこの恰好で何をどこからどう説明すべきかという理由を取り付けて躊躇した。
A組の教室を前に項垂れていると先ほどの生徒がついてきていたようで、「もういいか?」と声をかけてくる。