第12章 2.一虚一盈
「こいつは俺の親友!」
途中まで一緒になるところだったので正臣はるいに友人を紹介してくれた。
その友人は派手な雰囲気の正臣には少々意外な、普通の大人しい男子高校生タイプだった。
「りゅ、竜ヶ峰帝人です。新入生代表の人…ですよね」
るいは一瞬(霧ヶ峰?)とエアコンの名前が出てきたが、どうやらかなり変わったキラキラ思考の本名のようだった。
「ええ。わ、私は折原るい。紀田くんと同じクラスなんだ。同い年なんだから敬語はやめよう」
本当は1歳年上に当たるが、野暮というものだとるいは思った。これから友達としてやっていこうというのに。
「どこ行こうか。どこでも案内してやるから今日は奢れ」
3人で歩いて帰宅している途中、橋の下から何やら揉めているような声が聞こえてきた。
「矢霧君、本当は何か…」
それは眼鏡の生徒、園原杏里が矢霧誠二を呼び止めている光景だった。
「初日から欠席なんて…」
何やら聞いている様子だったが矢霧誠二は「知らない」の一点張りで、掴まれていた手を振り払う。
「あのー、どうかしました?」
正臣が杏里に声を掛けると、矢霧誠二もこちらに目を向ける。
すると矢霧誠二はとても驚いた顔をしており「いや、俺には俺の愛する人が居る…」とブツブツ言って去っていく。
その視線の先はるいだったように見えた。
声をかけられた杏里は律儀にもお辞儀をして矢霧誠二の後を追う。
「どうしたんだろう」
帝人と杏里の後ろ姿を見ていると正臣が「俺も罪な男だ」と言い始める。
「あのメガネっ子、俺に惚れたな〜?これなら始まるデンジャラスなリスキーデイズに不安を感じてるようだったぞ!」
と正臣が言い、るいと帝人は呆れた顔をする。
「ごめん、日本語で喋ってくれる?」
すかさず帝人がツッコミを入れると、思わずるいは笑ってしまう。
そうすると帝人も正臣も一緒に笑い始めた。
これから始まる学園生活に、胸を踊らせながら…。