第12章 2.一虚一盈
「じゃあ私もあっちに…」
スバルもその列へ行こうとすると静雄は立ち止まったままだったので振り返って呼ぶと手を振っていた。
「じゃあ俺仕事あるし行くわ。頑張れよ」
「???はい…」
静雄はそのまま立ち去ってしまう。何をしに来たんだろうと首を傾けたが、わからなかったので男の子の後ろに並んだ。
(写真取りに来ただけみたいじゃ…あっ)
『ご入学おめでとうございます。今社会は少子化で…』
体育館で行われる入学式では入学式名物、というより学校名物の校長の長い話を聞きながらスバルはうとうと船を漕いでいた。
このままではいけないと思いこれから世話になるのであろう教師の列を見る事にした。
教師が並んで座っている方を見ると1人の男性教師と目が合う。
男性教師はスバルの方向をというより、スバルをじっと見ていたようにも見えたが目が合うと視線を直ぐに外される。
男性教師は視線を外したものの、校長の方を見ずにまた生徒の方を見ていた。
(これから受け持つ生徒の事を見ているんだろうか…)
良い先生だと良いな、そんな期待に胸を膨らませてなんとか式を凌いでいると新入生代表の挨拶が始まるようだった。
『代表。折原るい』
「!」
まさかの今のところいい人なのか悪い人なのかよくわかっていない要注意人物、折原臨也と同じ苗字の名前で体が強張る。
その折原るいという人が返事をして立ち上がる。
折原るいという人物は長くて綺麗な金髪をなびかせた女子生徒で、「綺麗」という強い印象に周りの男子は少しざわついている。
『暖かな春の訪れと共に…』
「りゅ、竜ヶ峰帝です!」
入学式も無事に終了し、クラス分けが発表された。
今は自己紹介タイム。写真を撮ってくれた男の子とは何の縁なのか同じクラスで、仲良くなれたら良いなと思っていると彼の名前に驚いた。
(ペンネーム?いや本名だよね…。すごい名前だな…)
写真を撮ってくれた男の子もとい、帝くんと同じ1ーAクラスになったスバル。
どうやら新入生代表の綺麗な彼女は別のクラスなようで、仲良くなってみたいと思ったスバルは少し残念だった。
「園原杏里です…」
大人しそうな眼鏡の少女が挨拶して何人か後、ついにスバルの番が回ってきた。
「えーっと、あ、へ…平和島スバルです。よろしくお願いします」