第9章 衝突
「貴方、邪魔なのよ!」
るる子が扉を投げ飛ばすと静雄がそれを受け止める。
受け止めている間に扉の影からるる子が拳を繰り出すと、それも受け止めた。
るる子は顔に余裕が無い様子だが、静雄の方は余裕なのか笑みを浮かべている。
(やっぱり、魔法少女の力でも圧倒的な暴力には勝てない…)
互角に見せかけて、遊び半分の力を見せている静雄と恐らく魔法少女のスキルで力を出しているるる子。
「くっ…」
それを自覚したるる子はもう片方の手からも静雄の顔を目掛けて拳を繰り出すが、それも止められてしまう。
両手で押し合う形となった2人の地面はコンクリートにも関わらず、踏ん張っている体重でめくれてくる。
「不愉快…。不愉快よっ…!」
力の差が既にわかっている勝負にも関わらず静雄は勝負を終わらせようとしない。
るる子にはそれが不愉快に思えた。
「いや俺は今楽しいんだろうな。昔っからこんな感じの力だから似たような奴がいると思うと嬉しいんだよ」
力の強すぎる静雄は、力の押し合いをする機会が少ないので楽しい様子でるる子に「力の限り本気で来い」と言っているようにも見えた。
(るる子さんがどう頑張っても勝てるようには……)
と、思ったその時だった。
「喧嘩、良くないよ」
突然現れた露西亜寿司で働く黒人、サイモン。
そう言うと2人の首根っこを掴んで引き剥がした。
「えっ」
「は?」
引き剥がされた2人はさながら、首根っこを掴まれてプラーンとしている猫。
「何すんだよサイモン!」
慌てて降りた静雄はサイモンに楽しい所だったのにと言わんばかりに抗議をする。
「店の前で喧嘩、良くない。お客様怖い怖いよ」
オーバー気味に悲しそうにするサイモンを見てるる子も拍子抜けしたのか、サイモンの手から降りて服を整える。
正論を言われた静雄は「む…」と黙ってしまう。
今がチャンスだと思いスバルは静雄とるる子の間に入りこれ以上事が起こらないようにと止めた。
「……確かにこれ以上街を騒がしくするのは私達の流儀に反しますので、今日は引きましょうか」
よく見ると静雄が話題の緑の女の子とやり合っているということで周りには人だかりが出来ていた。
街の喧嘩を止める「乙女達」としてもこれ以上騒がれるのは避けたかったのだろう。