第9章 衝突
(ヤバい……ヤバいヤバい…)
手を握られているスバルの全身が「この女はストーカーというヤツだ」と信号を送ってる。
「あ、あのるる子さん…手をっ…」
手を強めに引っ張るが離してくれる気配は無く、ニコニコと微笑んでいた。
「でもね」
突然声のトーンが変わったかと思うと、るる子は険しい表情に変わっていた。
「貴女が健やかに暮らしているなら良かったけれど、良くない人と一緒に暮らしているみたいね」
そう言うと横で煙草を吸いながら立っていた静雄を睨みつける。
「あ?」
その隙に手を抜こうと引っ張るが、今度はとても強い力で手首を握られて痛みが走る。
「痛いっ…痛いです…!」
スバルが痛みを訴えた時、静雄はるる子の手を掴みスバルから引き剥がす。
「感動の再開かと思ったがどうにもそうじゃないっぽいから水を刺させてもらうけどよ」
持っていた煙草を地面に落とし靴で踏みながら、子供同士の喧嘩を宥めるように話す。
「こいつちょっと怖がってる見てぇだからまた今度にしてもらっていいか?」
そう言うと静雄はスバルの背中に手を添えて共に帰ろうとした。
だが、それの様子を見逃するる子ではない。
「平和島さん?私は今、スバルちゃんを貴方から引き離そうとしているのですよ?」
一瞬だった。スバルが気がついた置きには静雄の傍から離されてるる子にあろう事か、お姫様抱っこされていた。
(るる子さんの白くて細い体のどこにこんなスピードと力が…!?)
るる子の外見のどこにもそんな力を持っているようには見えず、スバルを取られた静雄はなぜだか少し笑っていた。
スバルを下ろすとるる子は近くにあった車の扉に手をついたかと思うと、扉の隙間に指を入れてあろうことかひっぺがしてるようにしか見えなかった。
ギゴゴゴ、と車から聞いた事がない音が出たかと思うとバキンッと外れる。
(もしかして、今の状態が変身した後なの…!?)
非力そうに見える彼女から出ている圧倒的な力は、変身をして力を使っているとしか思えない。
るる子がパワー系だとしても、倒的な力を持つ静雄に勝てるとは思えず相性が悪い。