第1章 魔法少女
そこらじゅうから聞こえてくる、沢山の行き交う人達の話し声。
ビルに設置されているモニターから流れてくるすごい音量の電気屋の広告。
所狭しと並べられているビル群。
その一つのビルの壁際にスバルは立っていた。
何かがおかしい。
(……?私はさっきまで魔法少女の仕事をしてたはず…?)
『スバル!あそこの角を曲がった公園にいるのだ!』
ほかの世界の魔法少女はどうだかしらないが、この魔法少女に空を飛ぶ手段はない。あるのは全力ダッシュのみだ。
「はぁっはぁっ…牛はいいよねっ…飛べてさっ…!」
息を切らしながら走るプリティな魔法少女が軽口を言うと牛は『マスコットの「ウッシーナ」なのだ!ちゃんと呼ぶのだ!そんなことより早く行くのだ!』と早口で急かしてくる。
(いつか焼肉にしてやるんだから…)
イラッとしながら公園に到着すると既に事は始まっていた。
小さな泣きじゃくる子供を抱えた、大きな影のような怪物と青を思わせる仲間の魔法少女が魔法を駆使しながら戦っていた。
「遅いめる!スバル!」
スバルに声をかけるのがやっとなこの魔法少女は「めるり」。本名かどうか、本当の年齢などは全く知らない仕事仲間だ。
「ごめんめるり!ていうか今日の夢魔、なんか大きくない!?」
そうなのである。いつもの夢魔は姿かたちは違えど大きくてもだいたい人の身長を越えないくらいだが、今対峙している怪物は人の倍ほどの大きさだ。
「そうめる!だから早くやるめる!子供に当てちゃだめめるよ!」
めるりは手から小さい火の玉を出して夢魔に投げて攻撃しているが、殴ったりしてくる夢魔の攻撃をかわしながらなので中々大きいダメージを入れることができない。
「わかってる!今魔法を撃つから引き付けといて!」
「人使いが荒いめるね!」と言いつつもめるりは細かな攻撃を出しながら言う通りにしてくれている。
「煌めけ!ガイディング・ボルトー!」
手から出したマジカルなステッキから準備していたのは雷の魔法。アニメのようなマジカルプリティな魔法などないのだ。一撃必殺。
スバルの手から1本の雷の棒が出現し、一直線に夢魔の胸に刺さる。
「ひゅー!さすがスバルはみんなと魔力が違うめる!」
スバルはめるりの言う通り魔力が強いらしい。必殺技レベルの魔法でも数回続けて撃つことができる。