第5章 吉川るいは猫を撫でる
「これはまぁ、妹ですよ。年の離れた妹から」
持ち前のクールなポーカーフェイスでサラリと言ったつもりだったが、臨也は「ふーん」と言うだけなので恐らく適当についたものだとバレている。
臨也には友人を探して家出してきており、帰る家が無いと説明してはいるが、得体の知れないるいにマンションの一室を貸してバイトとして働かせている。
(何もかも世話になってる身だけど、何度も思う。やっぱこの人胡散臭い人だな…)
臨也が遊んでいた謎の紙くずを片付けながらそう思う。
片付けているるいを後ろから見ながら臨也が「いい事」を考えついてニヤニヤしながら見ているのを知らずに。
「るいくんさぁ、友達探しに来たって言ってたけど連絡は取れたの〜?」
るいの作ったオムライスを食べながら、臨也は痛いところをつついてくる。
「……いえ」
一昨日臨也が「料理するならこれだよね〜」とるいに渡してきた無駄にフリフリな悪意のあるエプロンを着たるいは素っ気なく答えた。
「………まぁ連絡がついてるならわざわざ探しに来ないか」
一瞬考えた顔をしたが、すぐに元のニコニコに戻る。
この世界に来れば自分も自由に電話がかけられるという宛がありすぐに再会出来るというものがあったから、るいはこの世界に来た。
しかし何故かるいのネックレスは受信も送信も出来ていない。
変身は人の目が有るので試そうか考えている時に臨也に声をかけられたので、以降は臨也に見れる可能性があるのでやっていない。
(あんなものをこの人に見せたらどうなるかがわからない…)
食べ終えた食器を片付けていると、メモをるいに渡してくる。
「さっき言ってた「憩いの場」に、友達のいないるいくんをご招待」
受け取ると臨也は自分の机に戻ってパソコンを触りながら電話をかけたりと仕事に戻った。
メモを見るととあるアドレスが書いてあった。
だが今は一応労働中なので、とメモをポケットにしまう。真面目なのだ。
夕方、切らしている備品等を購入しようと電車に乗り、池袋の街へ出向いた。
すぐそこのコンビニでも買えるようなものだが、雇い主の臨也の所にいる為新宿へ居るので買い物を口実にスバルを探すために池袋に出向くのだ。
「スバル…どこにいるんだ…」