第5章 吉川るいは猫を撫でる
吉川るいは、魔法少女だ。しかし男なのだ。
彼は「彼」である事に違和感があるとか、そういう事ではなく人生の中で性別が一つである事がつまらないと考えていた。
なぜ恐らく魔法少女に選ばれたのはそういう心があったからなのかもしれない。
「めるり」という存在はるいが女の子になった理想の姿なのだった。
「あの、折原さん」
るいはとあるマンションの一室で何やら怪しい仕事をしている男の雑用をしていた。
スバルと同じように池袋に来たは良いものの、何故か自分はスバルと同じようにブレスレットで通信ができなかった。
制服姿で携帯と財布は持っては居たが、あちらの世界でスバルにメールを送った時と同様にアドレスが見つからず返ってくる。
宛が無く、ただ1人でスバルと同じく遭難してしまい立ち尽くしていたるいに声をかけたのがこの男折原臨也だった。
臨也曰く「困っていた高校生が居たから助けた」らしいが、1週間この男を見てきたるいはその言葉に疑念を抱いていた。
(この日本、いや世界全体まで知っていそうな底の見えない男。本当に困っていた高校生を助けただけなんて思えない…)
けれど名前も変わっていれば性格も変わっている男の事だ、本当にただ困っている高校生を助けただけとも考えられる。
その当の臨也はさっきから呼んでいるのにニヤニヤと何やらパソコンを見つめていた。
「折原さん。貴方が熱いお茶が飲みたいって言うから持ってきたんですけど」
パソコンと臨也の間に手を挟むとようやく気づいたみたいな顔をしたが、わざとやっているのではと思う。
「ああごめんごめん。結構前からある憩いの場に最近新しい人が来てね。その人と話すのが楽しくてさ」
そう言うとるいの手のお盆から茶を取っては「あっつ!」と飲んでいる。なんだか腹が立つのでめちゃくちゃに熱く入れたのだ。
こうしてお茶くみをしたり何だか見て良いものなのかもわからない資料の整理をさせられたりと、本当に雑用として働くことで住まわせてもらってるので強い文句は言えなかった。
「ねぇ 気になってたんだけど君のそのネックレス。クールな君に似合わないのにどうして付けてるの?なんかスーパーのお菓子コーナーで300円くらいで売ってそうだよねー」
クルクルと椅子で回りながらお茶を飲んでいる臨也は暇つぶし感覚で変な探りを入れてくる。
