第5章 吉川るいは猫を撫でる
もしかしたらこの数日でスバルは牛や猫など他の機関の人達と連絡を取っていると思われるので、るいが夢魔退治に向かった後に失踪した事を知っているかもしれないという思いがあった。
なのでスバルもるいを探していると。
しかし重大な欠点がここにはあった。
るいは魔法少女時にしかスバルとは会っていなかったのだ。
るいは魔法少女時のスバルも、同じ学校なので普通のスバルも知っていたが自分だと名乗ることで「めるり」という自分の理想が壊れてしまうようで怖かった。
男だと知るともしかしたら態度も変わってしまうかも、「めるり」の唯一の友人を失ってしまうかも。
(でも…そうなっても僕はスバルが安全に元の世界に帰ることを望む…)
とはいえ池袋にいる以外の手がかりがあるわけでも無いので、今日も宛もなく歩き回っただけだった。
もう少しで日が落ちてくるであろう時間。
るいは少し疲れたので池袋駅近くの公園で飲み物を片手に休憩することにした。
「おい静雄、いくら食べ盛りって言ってもそんなには食わねぇだろ。ぜってぇ買いすぎだって」
近くを通り過ぎる2人の男性が話しているのが聞こえる。
「そっすかね、いや女って人前だと食べる量セーヴしてるって聞いたんで本当はこれくらいなんじゃないかって」
金髪の男性は出てきたご飯屋のテイクアウト商品を購入したようだが、明らかに袋がでかい。
人にあげるつもりのようだが明らかに買いすぎだともう1人の男に注意されている。
(夜ご飯か…折原さんは夜にどこか出かけてることが多いみたいだし僕も適当にどこかで…)
もう本日のスバルの捜索はやめたようで、今日の夜ご飯を考えていた。1人だと食事が偏るので野菜を食べなきゃなどと考える。
「にゃ〜」
するとるいの隣にどこからかやってきた黒い猫がいた。
何やらるいに話かけているようだが、何を言っているかわからない。
だがこの手の場合ご飯を要求してるのだろう。
「猫…そういえば猫に何も言わずに来ちゃったから今頃大騒ぎだろうなぁ」
手を出すと頭をくっつけてきた猫を撫でながら、置いてきたマスコットのことを考える。
「………よし、君もお腹空いてるだろうし。折原さんを困らせてやろうかな」
そう言うとるいは猫を抱き抱え、頭を撫でた。