第4章 居候
スバルを背負い、湿布等入ったカバンを持った静雄は玄関へ向かう。
「あのよ。ほんとありがとな」
静雄は素直に礼を言った。新羅は驚きのあまり声を荒らげたが、その声がダイレクトにスバルに届く前に扉は閉められた。
マンションを出て、気まずいと思ったのか静雄は背負っているスバルに話しかける。
「あー…、お前さっきの話を信じるとかは置いといて服とか持ち物…それしかねえんだよな」
スバルにどう話しかけていいのかわからないのか、言葉を選びながら話しかけているのがスバルにはわかった。
「は、はい。制服と財布と携帯…。もしかして臭いますか!?」
入浴はしていたが着るものがこれしかなかったので洗濯は断っていたが、制服なのであまり洗うものではないとはいえ流石に2日は不味かったかと焦るスバル。
「いやそうじゃねぇんだけど、制服だけじゃ不便だろうし。お前が俺の家に居んなら買いに行かねぇと思ってよ」
静雄という男はきっと不器用な人なのだろうとスバルは思う。
しかしいくら静雄のせいで怪我をさせたという弱味があるとはいえ、家に居候になるスバルは気が引けた。
「わ、私あまりお金とか持ってないですし…」
気まずそうにスバルが言うが「いい いい。大人が言うことに子供は甘えときゃいいんだよ」と言ってくれた。
「すみせん…。ありがとうございます」とスバルが言うと再び会話がなくなる。
暫くすると少しずつ人が多くなってきたのを感じた。
よく考えたら池袋、大都会のこの時刻は人しかいないのではないだろうかと考えた。
次に考えたのはバーテンの人が怪我をした女子高生を背負っているという奇妙な光景を町中に晒すことになる、と青ざめた。
だが人の多さにスバルがゆっくりと歩くような余裕が無いのはすぐに分かる。
人々は2人の姿を見るや「おい、あれ平和島静雄じゃねえか」と少し離れた位置から確認する人や、写真を撮る人が居た。
(平和島静雄さんは、有名な人なのかな?)
するとその写真を撮る行動に静雄が気づく。
「おい今写真撮ったのお前か?」
カメラを2人に向けていた青年に近づき、青年に問うた。
「す、すみません!すぐに消しますから…!」
青年は不味すぎると言わんばかりの真っ青な顔をして携帯を操作し始めるが、時既に遅し。
静雄は両手が塞がっているので、青年に頭突きを繰り出した。
