第4章 居候
(な、今何をしたの!?)
背負われていて様子がよくわからないスバルは急な衝撃に、ただただ驚いた。
頭突きをした青年が逃げていくと周りの写真を撮っていたりヒソヒソしている人達が遠ざかる。
居なくなったわけではないが、物理的に距離を取ったのだ。
(何だかさっきから写真を撮ったりとか、平和島静雄さんは有名なのかな…。顔だって確かにイケメンだから)
ただこの地で静雄と新羅、セルティとしかまともに交流をしていないスバルはまだ静雄がただの顔の良くて性格が荒い力持ちのレベルでは済まないことを。
「あーイライラする。コソコソするぐらいならよ、正々堂々と聞くなりすりゃいいのによぉ」
怒り混じりで話す静雄は特にスバルに意見を求めている様子ではなかったので、スバルは終始黙っていた。
背中で揺られていたスバルは暖かさからなのか、次第に眠気に誘われる。
……。
「着いたぜ」
静雄は背中に乗せているスバルに声をかけるが返事がなかった。
そう言えば移動している最中途中から力が抜けて身を任せて来たな、寝たのか。と気づく。
今日の内にやはり布団じゃ最近の高校生は嫌かと思い適当にピンクのベッドを購入してきた。
そっとスバルを寝かせるとカバンを適当に置いて、自分も服を緩め、煙草に火をつける。
「前の仕事もクビになって、不注意で怪我させた女子高生家に入れてるとか幽に言えねえなぁ」
煙草を吸い終えると風呂に行った。
…………スバルは夢を見ていた。
仲の良い魔法少女が夢魔に戦いを挑んでいる風景。
(やめてめるり、めるりもこちら側に来ちゃう…)
めるりはボロボロになりながらも懸命に戦っていた。
何かを叫びながら戦っている様子だったが、スバルには聞こえない。
やがて夢魔に勝利するとスバルの時と同様に姿鏡くらいのゲートが出来る。
(だめ…離れて…!)
スバルはめるりに声をかけているが、しっかりと音になっていなかった。
(める……)
「めるり!!」
やっと声に出せたと思ったらスバルはベッドの上でめるりの名前を叫んでいた。
「ゆ、夢…?めるりがずっと夢魔を探してるとか聞いたからからな…」
いてて、と体を起こすとそこは知らない部屋だった。
(知らない部屋で目が覚めるのは2回目…)
そんな事をぼーっと考えていた。