第3章 他人(ひと)ん家(ち)
「魔法少女がスバル、マジカルチェンジ!」
腕を掲げるとペカーッと光がスバルの全身を包み込 み、部屋をもかなり明るく照らす。
光から現れたのは痛々しいギプスや包帯が巻かれた、変身後のスバル。
やはり怪我がマジカルな力で治るほど都合は良くなかったようだ。
戸からセルティはこちらをじっと見ていたが、感情がわからなかった。
「ど、どうでしょうか…(?)」
どう言ったら良いのか分からなかったので変な聞き方になってしまったが、セルティはスマホに文字を入力した。
『すごい!まさか手品じゃないよね』
スバル的には意外にもセルティが好感触で良かったと安心した。
「ま、魔法とか出来るんです」
立っているのがまだやっとなのでソファに座ると手にバチバチと小さな電流を作ってみせる。
すると突如変身が解け、元の痛々しい姿の女子高生に戻ってしまう。
「いたた…やっぱり万全じゃないからかな…」
セルティは『見せてくれてありがとう。だけど無理はしないで』と優しい言葉をかけるとスバルの背中をさすった。
『ところで、変身?した時の服がとても可愛らしかった』
「たっだいま〜!」
陽はすっかり落ちて午後の19時ごろ。
新羅はこのマンションに向かっていた静雄と会い、連れて帰宅してきた。
すると2人が入ってきたことに気が付かないほど何やら話し声が、正確にはスバル1人のだが話し声が聞こえた。
「何やら楽しそうだけど、スバルちゃんと仲良く……」
リビングに入った新羅には驚くべき光景が。その様子を見た新羅は驚きすぎて後ろに伸びのいたのだが、後ろにいた静雄は新羅をひらりと避けて新羅の体は床に倒れる。
「よぉ。……何してんだ?」
リビングの真ん中では黒いフリフリの服に身を包んだセルティがおり、その横でスバルがきゃっきゃっと喜んでいた。
セルティはあたふたとした後にいつもの黒いライダースーツに服を変えてしまう。
「ああ…もうやめちゃうんですか」
楽しそうにセルティと話すスバルを見て変な奴では無さそうだなと思う静雄。
「安中…だっけ。本当に…」
再び謝ろうとする静雄に「もう良いんですよ」とスバルは微笑む。
だって、その怪我がなければこのセルティという人に会えなかったのだから。