第3章 他人(ひと)ん家(ち)
スバルは事情を話すことを躊躇った。
セルティを見ると好きにすればいいという態度だ。
「私の、住んでいるところは、私の学生証から知っての通り…愛知県です。ですが、私は…家に帰る事ができません」
痛む脇腹を手で撫でながらゆっくりと話した。
「あー…まぁ誰にもそういう時期はあるっつーか、けど1回家に帰る事を…」
静雄は1度家に帰る事を施そうとするとスバルは「家出じゃないんです」と続ける。
「私は、この世界のよく似た日本から来ました。恐らく、招かれざる客…なんだと思います」
どういう反応をしているのか確かめるために顔を上げると、セルティと暮らす新羅は分かったようなという顔だが静雄は「…?」とまるっきり微妙な反応をしていた。
『見せた方が早いと思う』
セルティはそう言う。確かに、あの手品というには無理があるあの変身を見せるのが早かった。
「見ていてください」
スバルは痛む足でフラフラと立つとブレスレットをした腕を上にかざした。
「マジカルチェンジー!」
……………。
………………………?
何も起こらない。
「……?!マジカルチェーンジ!!」
何度やっても体にはなんの変化もなかった。
セルティも首をかしげている。
「はは。大丈夫だよ、家に帰りたくないという気持ちはわかったから」
新羅はセルティを見たからって変な嘘をつかなくても大丈夫だよ、という様子だった。
『違うんだ新羅、彼女は本当に』
セルティは急いで本当であると言うがどうにも分かってもらえなさそうな様子。
(魔力が尽きたとか…?でもそんなことよっぽど大きい魔法を使わないとなかったのに…)
スバルはブレスレットの具合を確かめるが特におかしな点は見られず、スバルの憶測が正しいと考えた。
「そんなに帰りたくないのなら、一先ずここに泊まって行っても構わないさ。そのケガだしね」
新羅がそう言うとセルティもそうだぞ、と言わんばかりの態度だった。
「そ、そんな。申し訳ないですよ、本当にいつまでなのか……」
スバルはこの世界に戸籍があるかどうかすらもわからない。なので部屋を借りられるかも不明だ。
なので本当に永遠にお世話になる可能性もあるのだ。
しかし静雄が手を上げた。
「いや、こいつをこの状態にしたのは俺だ。俺が責任取らねぇと」