第17章 農業生活十七日目
「ダメ?」
「好きに飲めばいいのに。それとも、誰かに送る人でもいるの?」
「僕が飲みたいだけだよ。でも、この珈琲豆って高価だから僕が・・・莉亜?」
あ~、本当に真面目だな。そういう分別出来るところは、好きだけど。
「リヒトには売らない。だって、もう半分は家族でしょ。必要な分はちゃんと分けておくから、それ以外なら遠慮なく飲んでいいよ。」
「うん、ありがとう。そっか・・・家族か。」
ハニかんでいるリヒトが尊い。そして、今回も二割増しの笑顔を頂きました。
収穫した豆を機材に入れれば、焙煎前の豆として出てきた。何って便利な・・・と言いたいところだけど、どうせなら焙煎後、もしくは挽いた後だと猶更有難い。
では、それ用の機材は?と言われるであろうが、もう一回入れてボタンを押せば焙煎された豆が出てくる。その内の二袋を出荷し、後は容器に収納。その後、リヒトが珈琲を淹れてくれることになった。
キッチンでリヒトの手際を見ていた。挽いている時のいい香りが広がる。あ~、癒される。そして淹れてくれた珈琲に口を付けた。苦い珈琲は苦手だけど、リヒトの珈琲は本当に飲みやすい。
目の前で飲んでいるリヒトが、何気ないシチュエーションなのにカッコイイ。目の保養だ。それに、リヒトは嬉しそうだ。
が、昼前になって寝不足の私は、珈琲を飲みながらウトウト。
「眠いの?」
「うん・・・。」
「そこのソファーで仮眠取ればいいよ。僕はこのままお昼の準備するから。ほら、おいで。」
直ぐ傍にあるから誘導して貰わなくてもいいのに、何処までも優しい。ソファーで少し横になれば、ショールを掛けてくれた。頭を撫でられ、頬にキスされる。
「準備が出来たら起こしてあげるから、それまで休んでて。」
「うん、ありがとう。」
もう一度、頭を撫でられる。その優しい手に安堵しては、私は目を閉じた。睡魔に勝てず、直ぐに意識を飛ばした私。
どれくらい、眠っていただろうか。人の話し声で、私は意識を戻した。一人はリヒトの声。もう一人は・・・誰?
部屋の中から外を見ると、やはりリヒトがいた。相手は、服装からしてお巡りさんだ。確か、レックスと言っていたっけ。
リヒトが私に気付き、微笑んでくれた。それにつられて、レックスもこっちを見た。リヒトに手招きされたので、外へと出た。