第17章 農業生活十七日目
目を開けた。辺りはまだ薄暗い。リヒトは隣りで眠っている。こんな時間帯に目覚めるのは初めてだ。
起き上がることは・・・うん、無理だった。予想はしていたから、無駄な足掻きはしない。それに、リヒトを起こしたくない。
目だけキョロキョロと、辺りを見回す。そして、目が合った。カーテンの隙間にある誰かの目と。怖すぎて声も上げられない。でも、確かに目が合った。
急に体が震え出す。相手だって、私と目が合った事に気付いているはず。どうしよう・・・どうしよう・・・怖い。
「・・・莉亜?寒いの?震えてる。ほら、もっとちゃんと僕にくっついて。」
「違っ・・・。」
上手く歯が嚙み合わない。
「落ち着いて、ちゃんと僕に伝えて。どうしたの?」
言葉に出来ず、私はただリヒトにしがみつくしか出来なかった。尋常ではない私の怯え方に、リヒトは周りを見回す。
でも、その頃には私が見た誰かの姿は無かったようだ。
「誰か、いたの?」
私は何度も頷いた。リヒトは大丈夫だと繰り返し、辺りが明るくなる頃には私の気持ちも落ち着いてきた。
「少し待ってて。」
「ヤダ、何処にも行かないで。」
「行かないよ。外を見るだけ。」
カーテンを開け、リヒトは窓を開け下を見た。その後、辺りを見回し窓を閉めた。
「もう少し寝る?莉亜が心配だから傍に居るよ。だから、もう少し眠って?」
「ううん。眠る方が怖い。」
リヒトは少し考えてから、いつものルーティンを2割増しの後、二人でキッチンへと行った。そして、今・・・溺愛中真っ只中である。
確かに怖い思いもしたし、リヒトには傍にいて欲しいけど・・・。ベタベタするのは、ジルドたちが来ても続いた。また、温い目で見られる羽目となったけれど。
朝の見回りの後、今日は温室へと来ていた。
「今日は珈琲豆の収穫だね。」
「随分、豊作だなぁ。」
木の下に敷物を敷いては、気を揺すってみた。バラバラと足元に珈琲豆が落ちていく。枝に残ったものを手で払い、下へと落としていく。
「こんなものかな。」
「ねぇ、この珈琲豆って出荷するの?」
「うん。いつも、イルミアさんに依頼受けているの。」
村長の来客の為らしい。しょんぼりするリヒトに、明確な量はそう多くないことを話せば両手を握り締められた。
「僕にも売って欲しい。」
「えっ、売る?」