第16章 農業生活十六日目
お昼の時間になり、リヒトはジルドたちの料理を振舞った。手軽に食べられるようにと、丼料理だ。そっか、またこうしてリヒトの料理が食べられる。
「お昼からは何をするの?」
「壺付けだよ。胡瓜とかキャベツとか。箸休めになるものを作ろうと思ってる。リヒトは何か遣りたいことがあるなら、そっちを遣って貰っていいよ。」
あれ・・・リヒトの笑顔が何か怖い。
「あ、あの・・・やっぱり、手伝って欲しいなぁ~なんて。」
「勿論だよ。」
即答だった!!危ない、判断を間違えるところだった。
「どうかしたの?」
「ううん。」
振り子のように、首を振る。
「あぁ、作業場に行ったら二人っきりだね。」
「だ、だめだよ?近くに人がいるんだから。」
「何がだめなの?理由を聞きたいなぁ。」
絶対、私の反応で楽しんでる。
「リヒトの意地悪。」
「僕が意地悪だって?心外だなぁ。そっか・・・莉亜がそう言うなら、もっと優しく・・・。」
「い、いえ、今で十分です。リヒトは優しいです。間違えました。」
肩を抱き寄せられ、頭にキスされる。
「良かった。僕の行いが間違いじゃなくて。」
「そ、そうだね。」
お願い・・・人がいるんだって。恥ずかしいんだって。誰か、リヒトに羞恥心を教えて下さい。
「じゃあ、そろそろ片付けて作業場に行こうか。」
ホッとしたのも束の間、抱き寄せられ唇が重なった。私のHPは無条件に0になりました。リヒトは、かなりご機嫌なようです。
場所は変わり、作業場に来ました。
テーブル台には、幾つかの野菜が並んでいます。15cmサイズの壺に、切り分けた野菜を詰めていきました。鷹の爪を入れて、自家製のお酢や出汁などで味付け。
手際のいいリヒトを、ポーッとした顔で見ていました。さっきまであんなことがあったのに・・・。で、見ていることも気付かれているようなのに・・・止められない。
「カッコイイ・・・。」
「ありがとう。」
リヒトの笑顔に、つい見惚れてしまう。
「後は僕がやろうか?莉亜は、僕を見てればいいよ。」
「えっ?」
私の手は疎かになっていました。それを注意も咎めることもなく、見てればいいって・・・。
でも、作業中のリヒトは特にカッコイイんだよね。どうしても見惚れてしまう。でもでも、作業はちゃんとやります。