第16章 農業生活十六日目
「昔のリヒトからは、考えられないな。まさか、ヤキモチ妬く時が来るなんてな。でも・・・やっと、人らしくなった。」
そんな風に言われるリヒトの昔って・・・。
「で、結婚式の準備は進んでいるのか?」
「衣装は依頼しましたし、指輪は僕の知り合いに注文しました。秋の一週目の週末ですから、滅茶苦茶急いでもらってます。」
そう言えば、私って何もやってない。
「リヒトに任せておけば心配ないな。その時は村上げて、祝ってやるよ。」
「お~い、ルド!!」
「はい!じゃあ、またな。」
ジルドに呼ばれて、行ってしまった。準備の事をリヒトに尋ねれば、ここではそういうものだと教えられた。新郎の方が全て準備するらしい。
現実とは異なるけど、リヒトなら安心して任せられると思えるから楽しみに待っていよう。で、指輪って・・・。
「サイズとかはどうしたの?」
「あぁ、夜に測った。莉亜が寝てる時。だから大丈夫だよ。」
大丈夫の意味が分からない。本当に抜け目ない人だ。って、じゃあ、寝てる時に体のサイズも?
「リヒト・・・じゃあ、全部見て・・・。」
「ん?そこはお互い様だよね?」
ケロッと何でもないように言われ、私は空いた口が塞がらなかった。確かに、お互い様だけどっ!!
「あれ?見足りないなら、いつでも見せるよ?いつでも、触っていいって言ったよね。あ、今?」
恥ずかしくなって、リヒトの口を手で塞いだ。
ペロッと舐められて、驚いて手を放した拍子に後ろに引っ繰り返りそうになって慌てる私の腕を掴むリヒト。でも、反動で今度はリヒトの方に一緒になって倒れ込んでしまった。
故に、今、私はリヒトの上に乗っている。リヒトはビックリした顔をしていたけれど、声を立てて笑い始めた。
「莉亜、怪我はない?」
「私より、リヒトだよ。何処か痛い所はない?」
「平気だよ。莉亜に怪我ないならそれでいい。」
何処までも笑顔だ。ちょっと心配症で、あちこち確認されたけれど。これも、リヒトからすれば通常運転だ。
~その頃~
あいつら楽しそうだな・・・。
そうですね。
リヒト、ちょっと変わったな。
そうですね。
あんな風に笑うヤツじゃなかったよな。
そうですね。
俺の嫁、何であんな早くに亡くなっちまったんだ。
棟梁?手を動かして下さい。
お、おぉ・・・そう怖い顔するなよ。