第15章 農業生活十五日目
改築が終わるまでは、お祖母さんの家業の手伝いとなったカミル。凄く嬉しそうなまま、帰って行った。
「前の僕なら、カミルを手離していたかな。この村に来る時も、そうだったんだ。」
気の毒に・・・カミル。でも、良かったね?
食事の後は、リヒトは出掛けて行った。被害届を出すと言って。私も止めたりはしなかった。当たり前だと思ったから。
水田や畑の見回りをしてから、土いじり。大豆が欲しい。小豆も欲しい。おはぎ作りたい。欲望の塊である。
勝手な創作フレーズで、おはぎを連呼していると笑い声が聞こえた。いや、私も浮かれていたのは分かってたけど・・・ちょっと恥ずかしい。
「ただいま。」
「お、お帰りなさい。」
「問題なく終わったよ。ねぇ・・・僕を抱き締めてくれないかな?」
私は両手を見る。リヒトは真っ白なシャツ。私の手は・・・土にまみれている。が、いいや・・・ハグした。汚れた手のまま。そんな私をリヒトは抱きしめ返してくれた。
「莉亜が未来をくれたんだじゃない・・・莉亜そのものが僕の未来なんだって思ったんだ。こうやって抱き合ってても、きっと・・・ずっと僕は莉亜が恋しいって思うんだろうな。」
「リヒト・・・。」
「続きは後にして、僕も手伝うよ。」
ん?続き?ちょっと疑問に思ったけれど、リヒトには芽キャベツの収穫をお願いした。
「ん、美味しいよ。」
どうやら、食べてみたらしい。いい笑顔のリヒトに近付き、口を開け齧った残りを所望し入れて貰った。
「あ、甘い。美味しいね。」
「お昼のパスタに使おうか。」
「サラダにもスープにも使いたい。」
一仕事終え、ランチ作り。予定通りのメニューを、これまたテラスで食べさせ合っていると今度はジルドが現れた。また、土下座しようとしたジルドに明るく声を掛けたリヒト。
「そんな謝罪は意味がないですよ。それよりもっと、建設的な話をしましょう。」
面食らったジルドは、私を見た。何故?
「リヒトに何を言ったんだ、莉亜。」
「莉亜は、ここでお店が出来るようにと提案してくれたんです。だから、手伝ってください。まぁ、拒否は出来ないでしょうけど。」
「拒否などせん!喜んでやらせて貰おう。要望も全て聞く。何でも言ってくれ。」
この時、リヒトの声が少しだけ冷めたものに。
「被害届は取り下げませんよ。」