第14章 農業生活十四日目 (R指定)
細工の箱は、そのものが芸術品だった。
「気に入ったの?」
「うん、可愛いし綺麗だし。」
「じゃあ、僕がプレゼントするよ。」
私の手から攫っていった細工箱。素直に奢られることにした。代わりに何か私からもプレゼントしよう。
次は、アクセサリーのお店。可愛いいピアスからシンプルなものまで並んでいた。因みに、リヒトもピアスをいつも付けている。
その中で、綺麗なアクアマリンのピアスがあった。そして、その隣りには、これまた綺麗なエメラルドのピアス。
少し値は張るが、とてもいい物だ。うん、買おう。二つ手にした私の手から、リヒトに奪われる。
「綺麗だね。僕も買おうかな。」
「じゃあ、今度は私がプレゼントする。」
「一つずつお互いに付けるってどう?それで、折半。」
お金は半分ずつ支払い、ピアスを分けることにした。右耳にはアクアマリン、左耳にはエメラルド。お揃いだ。
それにしても、リヒトは何をしてもカッコイイ。ピアスもよく似合っている。後は、村の中を散策。春の花や野草が咲いていて、心が洗われるようだった。
が、何かの音でそれも台無しとなった。
それは村外れの大きな桜の木の下から、聞こえてきた。つい、眉間に皺を寄せた私は悪くないと思う。
「見境ないなぁ・・・全く。」
本当にその通りだと思う。だって、そこにいたのは明白に体が繋がっているルディと彼女ではない観光客の女の子だったから。合意は合意なのだろうけれど、場所は選んで欲しいと思う。
でも、まさか観光客にまで手を出すなんて・・・。立ち去ろうとした時、女の子の泣きそうな声があがった。
「ちょっと、止めてよ!中に出していいなんて言ってない。」
「いいから黙ってろ。それに、もう遅い。」
小競り合いの中、ルディが私たちに気付き慌てて離れた。咄嗟に、リヒトに目隠しされる。回れ右をされ、リヒトに手を引かれその場を後にした。
途中で、ルドに会い、リヒトはルディのことを話した。勢いよく走っていったルド。リヒトが小さく息を吐く。
「ねぇ、どうなるの?」
「あんなことが観光客に知られたら、この村にとっても良くないだろな。可愛いからって声を掛けたんだろけど、相手も危機感ないし。どっちもどっちだろけど、精神的にも身体的にも傷つくのは女の子の方になるかもしれない。」