第13章 農業生活十三日目(R指定)
夕食に果物の桃とチキンとトマトと春キャベツのホットサンドを食べる。温室の桃は、完熟前だったけれど匂いにつられて二個だけ収穫した。
皮を剥き、かぶりつけば・・・果汁が溢れ出した。もう、無我夢中で一個を食べきった。もう一個はリヒトに食べて貰おう。
その後、お風呂で汗を流す。今日の疲れを取り、リビングに行くと・・・まだ、リヒトは帰っていなかった。暫く待ったけれど、居ても立ってもいられなくなり、お店へと行くことにした。
が、その途中で、人の声が聞こえてきた。小競り合いかと思ったけれど、どうやら一方的に何か捲し立てている。そっと覗いて見れば、そこに居たのはルディとリヒトだった。
淡々と話すリヒトに反し、ルディは気持ちが高ぶっているかのようだ。どこまでも冷静なリヒトに、ルディは増々苛立ちを蓄積させていく。
「あんたは、サッサと村から出て行けよ。あいつなら、俺が可愛がってやるから。」
「彼女の事は?」
「あっちは、まぁ・・・キープだ。別に結婚の約束までしている訳じゃないからな。」
随分な言いようだな。呆れながら、話しを聞いているとリヒトが笑い出した。冷えた空気を醸し出しながら。
「何が可笑しいんだ!!」
「自分が浮気されてるからって、僕の婚約者を巻き込むなよ。」
「ど、どうしてそれをっ!?」
浮気されてるの?でも、女の子の方からアプローチされたって・・・。
「どうして?それは、キミの彼女が僕を誘って来たから。随分、キミの彼女は気が多いみたいだな。滑稽で笑えるよ。」
「あ、あいつっ!!」
「キミがしようとしていることを考えたら、どっちもどっちだと思うけど。でも、だからこそお似合いじゃない?キミたちって。」
抑揚のない声色が、何処までも冷たく聞こえた。
「だ、だったら、俺はあいつとは別れる。だから、莉亜を俺に寄越せ。そして、お前は村から出ていけ。」
「随分な言い分だな。でも、他人が付けた印があっても、その気持ちは保てるのか?一つ屋根の下で年頃の男と女が暮らしているんだ。何も起こらないと思ってんの?」
リヒトは、更に言葉を続けた。
「莉亜、そこにいるんだよね?」
バレてたっ!!仕方なく姿を現すと、リヒトが近付いてきた。
「僕を迎えに来てくれたんだね。」
「うん。」
ハグされると、いきなりキスされた。直ぐ傍に、ルディがいるのに。