第13章 農業生活十三日目(R指定)
「俺の実家を手伝わせることにした。」
ケビンの実家というのは、かなりこの村から離れた更に田舎らしい。双子は激怒し暴れたらしいが、ケビンは首に縄を付けてでも連れて行くと言ったのだと言う。
ケビンは仕事を引退し、田舎に娘共々引っ越そうとしたようだが、雇っている人たちが露頭に迷うことになるとのことで諦めたらしい。
「いつですか?」
「明日だ。俺の叔父が引取に来る。そして、そのまま向こうで嫁にやる。」
双子に移動手段は無いらしく、一度、行ってしまえばどうすることも出来ないと教えられた。後味が悪かったけれど、親であるケビンが決めたことだ。納品書を受け取り、私たちはケビンを見送った。
「ごめん、まだ準備出来ていないんだ。手伝ってくれる?」
「勿論。」
簡単にサンドイッチと私の好きなゴボウサラダ、そしてコーンスープ。爽やかな風の中、二人で食事。今日は向かい合わせではなく、リヒトの隣りに座った。
「莉亜・・・ケビンさんから処遇を聞いても、僕は何も思わなかった。むしろ、清々してる。こんな僕って、人として冷たいよね。」
「でも、それはリヒトがじゃなくて、私が泣かないでいられるからでしょう?そこを間違えちゃダメだよ。」
「うん・・・ありがとう。」
少しだけ、眉を顰めるリヒト。そんなリヒトに抱き付いた。
「明日は、一日、莉亜の傍に居る。そうだ、買い物にでも行こう。」
「うん。」
いつものよう微笑むリヒトに、私も笑顔を向けた。
さて、今日も食事の後は畑を見回り、小麦の刈り入れ。機材に放り込み、小麦粉へとなっていく。サラサラで光っている様に見える。
「莉亜、ちょっといい?」
「うん、いいよ。」
「あ、小麦粉?綺麗だね。だからなんだろうなぁ。饂飩を打ったんだけど、湯がいてみたら凄く綺麗なんだ。味も凄く美味しくて、莉亜に試食して欲しいだよね。」
美味しいものを共有してくれる。そして、リヒトの饂飩は確かに綺麗だった。饂飩だけど、もち肌っぽいと言うか。抹茶塩で食べたのだけど、思わず美味しくて声を上げてしまった。
リヒトはその饂飩を持って、お店へと出掛けた。今日も繁盛しそうな気がする。私はというと・・・定期的に収穫していた春茶葉と紅花を加工しては、作業を満喫していた。
今日はケビンに加工品をたくさん出荷したから、纏まった金額になるだろう。