第12章 農業生活十二日目
テーブル台の上に袋を出す。リヒトにボウルを出して貰い、その中に獲れたての川海老を入れた。
「えっと・・・買ったんじゃないよね?」
「うん。川で投網やってきたの。」
リヒトもカミルも、唖然としている。どうしたんだろう?川海老嫌いだった・・・とか?いそいそと袋に戻そうとすると、リヒトに止められた。
「気にする根本なところが違うんだけど。川に行くって聞いてないよ?」
「ごめんなさい。急に遣りたくなって・・・。で、でも、一応、連絡板には書いておいたよ?」
「全く・・・。連絡板に書いたのなら今回だけは妥協するけど。次からは、妥協は無しだからね。」
過保護が酷い・・・。でも、今だからなのかもしれない。素直にリヒトのいうことを聞いておこう。
「素揚げが美味しいだろうね。ちょっと待ってて。」
綺麗に洗った後、そのまま油の中に投入。そして、カラッとした川海老が揚がった。それに燻製した岩塩を振りかける。そして、三人で試食。
皆の表情が明るくなった。試食の海老は、直ぐに完売した。その時、お客さんに呼ばれカミルが店頭へと出て行った。お客さんの声が聞こえる。
「海老の香ばしい匂いがするな。それは何って料理だ?俺もそれが食べたいんだ。」
「いえ、海老料理は今日はありません。」
カミルの容赦ない言葉に、私たちは吹き出した。
「莉亜のことだから、家であるんだよね?持って来てくれた分、素揚げで出していいかな?」
頷くと、リヒトがカミルに声を掛けて、試食として出すことになった。海老もいいんだけど、きっとこの燻製した岩塩もいいんだよね。
その後は、リヒトがパンケーキを焼いてくれて、厨房の片隅で食べることに。甘くていい香りだ。それにフワフワ。フォークが進む。もっと食べたいけれど、夕食の時間に近いから我慢。
「ねぇ、リヒト。このバターと生クリームって・・・。」
「莉亜の冷蔵庫のものだよ。」
そっか・・・。ケビンに頼んで、牛乳の量を増やして貰おうかな。
「牛乳なら、ケビンさんに手配しておいたよ?」
「えっ?あ、ありがとう。」
「加工は僕も手伝うから。」
それなら、心強い。重そうだもんね、あの牛乳缶。ゲームでは、気にすることじゃなかったけれど。今日もお店が終わる頃、勇み足でやってきたへこたれない双子。