第11章 農業生活十一日目
堪能させて貰って満足。リヒトもあまりにも美味しかったから、私を呼びに来てくれたらしい。
「お昼からの予定は?」
「あ、うん。布地を持って服の依頼するの。後は時間あるから、手伝いに行っていい?」
「助かるよ。少しずつ人は減ってる・・・気がしないんだ。有難いんだけどね。」
お昼になり、リヒトはお店へと出掛けて行った。私は二階で布地の選別。何種類かを鞄に詰めてから、トーストピザと野菜サラダを食べる。
その後は、作業場に来ていた。どうやら、燻製機も完成したらしい。出来立てホヤホヤのハム。勿論、試食する。ご飯食べたばかりなのに止まんない。うん、ハムをリヒトのお店に持って行こう。
鞄には布地、籠にはハム。よし、行こう。行き先はシノンのお店。既製品も売っているけれど、私は専ら誂えて貰っている。その時、簡単なデッサン画や要望などを書いたメモを渡す。
「こんにちは。シノンさん。」
「いらっしゃい。今日も持ち込み?」
布地を渡すと、一通り目を通している。
「相変わらず高品質ね。で、これがデッサン・・・ん?男性物ってことは、リヒトくんのものかしら?分かったわ、素敵なものを作るから楽しみにしてて。」
「お願いします。」
当たり前にリヒトとのことを知られている事は、何も言わないでおく。喜んでくれるといいなぁ・・・。洋服店を出て、リヒトの店へと向かう。
店の外に人はいなかったのだけど、何か店内から騒がしい声が聞こえる。今日は正面のドアを開けて、そっと中の様子を伺うことにした。
そして、中に居る人を見て驚いた。赤髪のあの双子が、カミルに悪態を付いていた。カミルは取り乱すことなく、あしらっている様でそれが余計に苛立たせているのだと思われる。
双子の要望は、厨房の中に入れろ。リヒトと話をさせろ。この二つだった。お客さんは気まずそうにサッサと食べている。誰もが助け舟を出そうともしない。
一瞬、カミルがこっちに気付き顔を横に振った。今は入って来るなという事だろう。さて、どうしよう・・・そう思っていると、リヒトが厨房から出てきた。
注文の料理をお客さんに渡していると、双子がリヒトを挟む。小さく息を吐いた後、カミルに店を任せて外へ出て来ようとした。慌てて身を隠した私。
店の裏へと三人が消えた。さっきとは違った声色で、リヒトに要望を話している。