第11章 農業生活十一日目
朝、苦しくて目が覚めた。苦しいのは物理的に・・・。だから、寝ている時には控えて欲しいのだけど。
「おはよう、莉亜。」
「お、おはよう。」
王子様スマイルの如く、キラキラした笑顔のリヒトに何も言えないでいる私。妙に機嫌が良さそうだ。と、そこで思い出す。今日の夜には・・・。一瞬にして、顔が真っ赤になる。
「顔・・・赤いけど、何を想像してたのかな?」
「え、えっと・・・ご想像にお任せ致します。」
「フフ、そういうことにしておくよ。じゃあ、支度してキッチンにおいで。」
颯爽と部屋を出て行ったリヒト。あ~、絶対リヒトの手のひらで踊らされている気がする。カッコイイから許す。さて、準備してキッチンへ行こう。
そして、キッチンに行った時には、サラダに温泉卵を乗せているリヒト。思わず声が上げる。見た目にもグレードが上がった気がする。いや、美味しいのは間違いないのだけど。
今朝は炊き込みご飯。きのこや山菜が盛り沢山。それを焼きおにぎりにしている。香ばしいいい香りがキッチンに立ち込める。歓喜に沸く私に、それを見て笑っているリヒト。
「運んでくれる?」
「は~い。」
朝から大満足の食事。
「お願いがあるんだけどいいかな?」
「お願い?どんなこと?」
「昨日のチャーシュー、どれだけ作ったの?」
卸して欲しいと要望を受け、必要な分を持って行っていいと言ったら喜んでいた。食事の後、私は甜菜の種蒔き。後は、温室で果物の採取。
そろそろ、ワインを仕込んでおこう。って、欲張った私は籠が持ち上がらなくなっていた。山盛りの果物に途方に暮れる私。
「それ、作業場に持ってくの?」
「あ、リヒト。うん、そうなんだけど重くてどうしようかって・・・。」
リヒトは軽々と持ち上げた。私も別の籠を持ち上げ、リヒトと作業場へと向かう。そして、ワインの機材へ果物を設置。これで後は放置。
「莉亜、こういう時は僕を頼って?無理しちゃダメだよ。」
「うん、ありがとう。ん?何かいい匂い・・・。」
「あぁ、チャーシューを炙った匂いだよ。でも、本当にそそられるよね?つい、摘まみ食いしちゃったし。おかげで、今日も忙しくなりそうだよ。」
いいなぁ、摘まみ食い。
「フフ、おいで。」
含み笑いをされて、手を引かれて行った先はキッチン。小皿には、炙ったチャーシューが乗っていた。