第10章 農業生活十日目
一番大きな寸胴鍋に、醤油や香草を入れていく。醤油のいい香りが鼻を擽る。味見で舐めてみれば、申し分無だ。そこへ、大量の豚肉を投入。後は煮込む。只管、煮込むのみ。
その後は、ハム作り。調合した香辛料を豚肉に刷り込み、燻製機へこれも投入。ついでに、岩塩を砕いたものも同じく。仕込みが終わった頃、リヒトが現れた。
「そろそろ行って来るよ。」
「あ、うん。頑張ってね。」
ハグされて、キスもされる。えっと・・・長い。そして・・・まだ。
「ん、これで頑張れるよ。」
やっと離され、リヒトを見送り私はランチ作り。冷蔵庫を開けて物色。中華丼にシャンタンスープ。そして欠かせない、温野菜。燻製した岩塩を振りかける。
テラスで一人食べていると、敷地前に人影が見えた。どうやら、中を伺っているみたいだ。目を凝らして見ていると、それがルディだと分かった。
何か用なのだろうか?行動を眺めていると、倉庫の方をチラチラ見ている。何か、胡散臭い。倉庫は毎回施錠しているから、勝手に入ることは出来ない。
他の建物も然りだ。だからと言って、気持ちのいい事じゃない。ってことで、大声で呼びかけてみた。距離として30mくらい先にいる。
ルディは私に気付いて、逃げて行った。全く、失礼な人だ。でも、何の用だったんだろう?何か欲しいものでもあったとか?ちょっと用心しておいた方がいいのかも。
さて、綿を採取して生糸作りだ。可愛いよね~、真っ白の綿。フワフワだし、風で揺れている時は中々にいい光景だと思う。
畑で咲いた綿を収穫しては、生糸にしてくれる機材へと放り込んだ。追加として若草色に染まる野草も投入。暫く待っていると、縄網みされた生糸が出てきた。
「うん、いい色。次はラベンダーで薄紫にして・・・。」
楽しくて何種類か出来上がった生糸。それから機織り機で布地へと織り上げていく。勿論、自動で動く。そう言えば、リヒトは髪が長いから髪紐とかもいいかもしれない。
そうだ、サトウキビだけじゃなくて、甜菜も植えて違う砂糖も作りたいし・・・。もう、春も10日目だもんね。時計を見れば、3時を過ぎていた。
そろそろチャーシューがいい頃かもしれない。一階に降りると、玄関でガチャガチャと音がする。来客かなと思い玄関へと行って見ると、そこにいたのはルディだった。
また、戻って来たのか。何の用だろう?