第10章 農業生活十日目
大したことないって・・・でも、たぶんだけど・・・双子のことじゃないのかなぁ?リヒトの事で、機嫌を損ねているんじゃ。気になってたんだよね。双子の事。
「莉亜?どうかしたの?」
「ううん。野菜採取に行こう。」
足を踏み出した私の腕を、リヒトが掴んだ。いつになく、真面目な顔をして、私の顔を見ている。
「どうかしたの?」
また、同じ言葉が発せられた。
「双子の事なんでしょ?仕方ないじゃない・・・ヤキモチ妬くんだもん。」
リヒトの手が私の頬に触れ、顔を上げさせられた。
「僕はあの双子のこと嫌いだけど。」
「えっ?でも、個性的だけど、悪い子じゃないからって・・・。」
「僕には意地悪しないからって意味だよ。それに・・・僕より好みの男が現れたら、サッサと僕を捨てるだろうし。」
リヒトよりイケメンって、ちょっと想像できない。
「実は、一度街に来たことがあったんだ。そこで簡単に持ち帰りされてたよ。元々、どうでも良かったけど、それが決定打かな。」
エグい内容だった。ケビンは知らないのだろう。そりゃあ、リヒトもちょっとって思うよね。
「折角だから話しておくよ。僕が村を出た理由。半分は男のやっかみが執念深かったことと、残りの半分は料理の勉強をしたかったから。」
何か、似てるのかな?私は気付かなかったんだけど、やっかみに・・・。
「莉亜を知ったのはコンテストだったけど、同じ様にのけ者にされてても前向きに頑張っているところに興味を持って・・・だから、ケビンさんに会わせて貰えるように頼んだんだ。」
「同情?」
「始めはね。でも、莉亜の周りはキラキラしてて、素直で優しくて温かい。僕は人を遠ざけて来てたから、他人との距離感が分からなくて・・・でも、どうしても莉亜が欲しくなったんだ。」
うん、反動だね・・・これは。それと、だからこその不安。
「村の事は、誰に聞いていたの?」
「ルドさんだよ。あの人だけは、僕に優しかったから。」
そっか・・・。だから、ルディのことも何か聞いたのかな?
「そろそろ畑に行こうか。」
「うん。」
リヒトの手をキュッと掴むと、驚いた顔をした後嬉しそうに笑顔を見せてくれた。うん、やっぱりリヒトがいい。
畑で野菜や果物を採取し、見回りも済ませた。リヒトはお店の下準備。私は作業場に来ていた。これからチャーシュー作り。