第9章 農業生活九日目
こういう時は、それなりの言い訳と言うか・・・でも、私の口から出た言葉は心の声の方だった。
「目の保養・・・あっ!」
「フフ、そっか。種蒔きは終わったの?」
「う、うん。今から裏の小屋に行こうと思って。リヒトは欲しいきのこはある?」
すると、リヒトの手が止まって・・・側に来ては、私の両肩に手を置いた。うん、既視感は気のせいじゃない。
「リヒト?」
「伝えに来てくれたことは嬉しいよ。でもね?少し休もうか。僕が果実水入れてあげるから。さ、こっちに来て。」
キッチン前に椅子を持ってきて座らされる。目の前では、ライムとレモンを絞り少しの蜂蜜を水と混ぜるリヒト。その仕草すらも目の保養。
「はい、飲んでみて。」
「ありがとう。いただきます。」
ごめん・・・一気飲みだった。思ったより喉が渇いていたみたい。それに、美味しい。
「ご、ご馳走様。その・・・美味しかったです。」
「口に合ったようで良かった。そうだ、キノコだけど・・・ホイル焼きしようかと思うから適当に見繕ってきてくれるかな。」
「うん。松茸も入れる?」
リヒトの目が点になった。
「松茸はまたでいいよ。」
「うん、分かった。じゃあ、行って来ます。」
「いってらっしゃい。」
笑顔で見送られ、私は小屋へと来ていた。品種後に分けられた細長い小屋。籠の中に適当に良さそうなものを摘んでいく。椎茸は乾燥機に掛けて、干し椎茸へと変貌。
ケースに詰めていると、ひょっこりリヒトが顔を出した。どうやら、下拵えが終わったらしい。
「お店に行くの?」
「うん。それ・・・干し椎茸?」
10個ほどリヒトに詰めたものを渡した、
「ありがとう。」
「後は、こっちの容器がキノコの詰め合わせだよ。」
「いいものだね。嬉しいよ。あ、お昼どうする?お店に来る?」
誘ってくれたけど、私は辞退した。折角だから、村の人に食べて貰いたい。私はリヒトの料理を何度も食べさせて貰ったから。
「私なら適当に食べるから大丈夫。頑張ってね。」
「分かった。いつでもおいで?僕は嬉しいから。」
丁度、カミルが訪ねて来て、二人でお店へと出掛けて行った。今日から、昼と夜は自炊だ。キノコは佃煮にしよう。後は野菜と合わせてかき揚げ。種にするのも忘れない。
ランチはローストビーフで、丼にしては食べたのだけど・・・。