第1章 農業生活初日
ケビンは遠慮なく、クラッカーにジャムを塗って口に運んでいる。
イケメンは匂いを嗅いで、一口目は何も塗らずに口に入れていた。うわぁ・・・吟味されてる気分。
そして、一瞬目を見開き、口元が綻んだ。更に、ジャムも匂いを嗅いでクラッカーに塗っている。
だから・・・試験されてる気分だよ。
「すみません・・・こんな、試す様な事をしてしまって。仕事柄、どうしても・・・。」
「構いませんよ。」
本心は、別だけど。まぁ、仕方ないのかなぁ。職業病みたいなものだろうし、悪気があるわけじゃないだろうから。
そして、ジャムを塗ったクラッカーを口に入れ・・・動きが止まった。
あれ?固まった?今・・・ゲーム中?
って、何?何か、嬉しそう??
ハーブティーにも口を付け、ホッと一息ついたようだ。
これから、審判が下るの?怖いなぁ・・・。
「莉亜さん。」
「はい。」
「僕と友達からでいいので、付き合っていただけませんか?」
私もケビンも、目が点だった。
新しいキャラは、せっかちなのだろうか?幾ら、前の話しで恋愛も結婚もしなかったとは言え、いきなりこの状況。
「リヒト・・・本気か?」
「えぇ、勿論。この様な穏やかで優しい味を出せるのは、莉亜さんがその様な人柄だからだと思いますから。」
「まぁ、確かに働き者だし人柄もいいけど・・・お前、誰とも付き合わないし結婚しないって言ってなかったか?」
私の存在って、作物のついでの様な印象を感じるのだけど?
「それに・・・可愛いです。」
ん?何が?
「確かに、莉亜がこの村に来た時、ちょっと騒動になったけど。」
騒動?初耳ですけど!!
「村の年頃の娘らが、莉亜に若造を取られない様にって動いていたからなぁ。」
えっ?そうだったの?
「では、莉亜さんは思いを寄せる人はいないのですか?」
「い、いませんけど。」
「そうですか。では、頑張ります。」
何を?何を頑張るの?
「えっと・・・ご用は?」
「すみません。失念していました。この村で店をやるにあたり、莉亜さんの作物を卸していただけないかと思いまして。」
村在住で、お店かぁ・・・。街だったら断わろうかと思ったけど、ここならそんなに頑張りすぎなくても出荷量は何となりそうかな。
「お店はどちらで?」
それは、代わりにケビンが答えてくれた。