第8章 農業生活八日目
結果的に・・・カミルもお酒には強かった。それは良かったのだけど・・・今、難しい顔をして、チェリー酒を見ている。ケビンが言っていた、あのチェリー酒は私も興味ある。
でも、リヒトが却下した。ただ、店には入荷するから客としてならいいよと。グラスワインとしてなら、そう高価過ぎないだろう。流石に、二人の目の前では飲めないので私も我慢。
ワインはローテーションで入荷することになった。葡萄の赤と白は定番にしたけれど、それ以外は2種類ずつを2週間毎にチェンジしていく。
「リヒトさん。購入は出来ないのですか?お店からでいいので。」
「考えておくよ。ん?来客かな。」
外へ出ると、ケビンと若い男性がいた。歳は私とリヒトの間くらい。
「この前話したクベル。」
「クベルです。よろしくお願いします。」
人懐っこい笑顔で、大らかな人柄に見える。挨拶を交わし、早々に荷物を店へと運んでくれた。リヒトたちも一緒に店へと行ってしまった。
残った私は、一人で裏山へと来ていた。肩から籠を下げて、山菜摘みだ。筍は想像より細めで、柔らかそうだ。山菜は栽培出来ないんだよね。そう言えば、そろそろ次の野菜の種まきもしないといけない頃だ。
きのこも使ったから、冷蔵庫の中が寂しくなってきていると思う。きのこは椎茸・エノキ茸・エリンギ・しめじ・松茸も栽培できる。そっちは、きのこ小屋へ採取に行こう。
だから、つい・・・そう、ついなんだよ?薄暗くなって来て、慌てて帰ったのだけど・・・仁王立ちのリヒトが玄関前でいたんだよね。
体が二つ折りになるくらい、謝罪しました。その勢いで、籠から山菜が零れたけれど気にする余裕なんてありません!!
「ねぇ、莉亜。お昼前に愛を育む時間が取れなかったから、拗ねてるのかなぁ?」
「め、滅相もないです。」
あれ?空気が冷えた?
「どうでもいいって言いたいの?」
「それはないからっ!!」
勢いよく叫んだら、リヒトはニンマリと笑った。何か、どんどん追い込まれて行っている気がする。逃げ道皆無?
「それは良かった。じゃあ、なるべく早くに話を進めようね?」
「えっ、話って?」
「勿論、僕たちの結婚式だよ。」
あ~、詰んだ気がする。って、どう答えても同じ結果に導かれる様な・・・。何で私、行き先くらいメモに残さなかったんだろう。