第8章 農業生活八日目
夕飯は用意してくれていて、いつもは向かい合って食べているのだけど・・・ジィッっと、私を見ている。食べながらだけど・・・。
「綺麗だろうね?莉亜の花嫁姿。」
「リ、リヒトだってカッコイイと思う。いつもカッコイイけど。あの・・・今日もごめんなさい。心配掛けて・・・。」
「もういいよ。でも、僕にこれ以上心配掛けたくないのなら、僕のお願い聞いてくれるよね?」
お願いって?リヒトの顔を見ると、いつもの穏やかな顔になっていた。そのことに安堵する私。でも・・・。
「本当は来年の春まで待つつもりだったけど、今年の冬前には僕のお嫁さんになってね?」
「は、はい。」
自分自身の失態と言え、こんなことになってしまって・・・でも、リヒトは本当に私でいいのだろか?リヒトは変わらず、対人願望無しだと言った、
誰に対しても物腰が柔らかいし、人当たりもいい。それなのに、誰にも執着しない。リヒトがそうなった理由は、何だろう?
夜になり、リビングでリヒトに羽交い絞めされていた。この反動の執着は・・・。嫌、嬉しいけど。凄く嬉しいけど。やっぱり、リヒトのこと好きだし。
「リヒト?」
「ん?」
「連絡板作るよ。ほら、掲示板みたいに書き込めるの。それを壁に取り付けるから。だから、ちゃんと居場所は明確にする。心配させた私が悪いし、ちゃんと考える。」
リヒトは頭を撫でてくれた。優しくて大きな手。
「うん。何かあった時に、探す場所が分かっていればそれだけでも違うから。」
「リヒトも書いてね?」
「勿論。でも、僕はここか店のどちらかだろうなぁ。」
そう言えば、いつも側に居る。買い物もケビン任せだし、住人たちとの触れ合いもない。でも、一人で出掛けたらそれはそれで気になる。リヒト、カッコイイし。女の子がほおっておかない。
「そろそろ寝ようか。」
先に立ち上がったリヒトに両手を差し出した。何も言わずに抱き上げてくれたリヒトの首にしがみつく。
リヒトの顔を見ると、蜂蜜色の瞳が細められる。ヤバい・・・リヒト、本当にカッコイイ。
私も・・・もう少し執着していいのかな?