第8章 農業生活八日目
そんなこんなで、気付いたらお昼の時間。採取はリヒトに任せて、私はカレー作り。スパイスを調合し、寸胴で炒めた。隣りには、ワイン(赤)で茹でた鶏肉。そして、自家製のトマトを潰したもの。
料理人相手に・・・と思われるかもしれないけど、私は料理が嫌いじゃないから気にしないでおく。煮込む間、トッピング用の野菜を素揚げする。ご飯の準備も万端だ。
そろそろリヒトをと思った時、誰かが訪ねてきた。来客なんて初めてだ。ドアを開けると、菫色にシルバーの瞳のイケメンがいた。特徴からして、このイケメンがカミルだろう。
「カミルと申します。こちらに、リヒトさんはご在宅でしょうか?」
「はい。案内しますね。」
温室へと案内すると、リヒトが林檎を採取中。
「リヒト、お客さんだよ。」
「あ、カミル。来てくれたんだ。」
カミルは表情も乏しく、口数も少ない。でも、リヒトのことを大事に思っていることは伺えた。リヒトはお互いを紹介してくれ、私を婚約者だと言ってくれた。
物凄く驚かれたけれど。対人願望ないことは、知っているらしい。その時、腹時計の音が響き渡った。因みに、私でもリヒトでもない。少し恥ずかしそうにしている、カミルがいた。
「リヒト、ご飯できたから食べよう?カミルくんも一緒に。」
「え、貴女が作ったのですか?」
まぁ、普通はそう思うよね?
「カミル、失礼だよ。」
「すみません。」
他意は無いのだろう。私も別に気にしない。さて、ご飯だ。盛り付けはリヒトに甘えた。その間、野菜サラダのドレッシング作り。今日はゴマドレッシング。テラスで食事だ。
私は二人の反応を見ていた。やっぱり、緊張はする。二人揃って口に入れ、動きが止まった。シンクロみたいに。
「リヒト、どう?」
「美味しいよ。レシピ教えて欲しい。カミルは?」
「美味しいです。」
信じられないと言うかのように・・・。
「莉亜、お替りしていいかな?」
「うん。カミルくんはどう?」
「いただきます。」
しっかりとお替りをして、一息着いたようだ。お昼からはワインの試飲PART2。そして、お店の下拵えをウチでやらせて欲しいと言ってきたリヒト。別に問題はないので快諾。
作業場からリヒトがワインを持ってきてくれた。おちょこサイズのカップで試飲。前回のことがあるから、その防止策だろう。