第8章 農業生活八日目
気を取り直して、畑にやってきました。リヒトのメモには、多種類を少量ずつ書かれていた。どうやら、色々と最初は試してみるらしい。私もそれには賛成だ。
そして、つい春キャベツを齧っている私。柔らかくて超美味しい。
「兎みたいだな・・・莉亜って。」
笑われて、恥ずかしくなる私。それに、兎に見えてるの?
「僕にも食べさせて?」
笑われたからか、丸々した春キャベツをそのまま手渡した。驚いた顔したけれど、やっぱり笑っている。本当に笑い上戸な人だ。
そして、畑の端に植わっている菜の花。ミツバチが群がっている。そうだった・・・養蜂箱あったっけ。確か・・・畑と水田を繋ぐ道の途中にある脇道を入ったところだ。
「リヒト、ちょっと行ってくる。」
走りだそうとした私だったけれど、しっかり引き留められた。更に、腰に腕を回され引き寄せられる。
「ねぇ、莉亜?勿論、僕も同伴だよね?」
「は、はい。」
素直に返事しておいた。反論したら、精神的にトドメをさされそうな気がしたから。自然な防衛反応だと思う。
養蜂箱は、ゲーム通りの場所に確かに存在していた。数としては4×4の16箱。そのどれもに、蜜蜂はいてくれた。それを確認だけしては、そっと離れた。
「蜂蜜の為だよね?家に蜂蜜あったっけ?」
「倉庫の奥に瓶詰したのがあるよ?それと・・・あの木は楓。メープルシロップ・・・あっ!」
またしても、いきなり走りだそうとした私だったけれど、それも叶わなかった。リヒトの笑顔が怖い。次の行動が怖くて、先に私はリヒトの手を掴んで走りだした。
山の麓に並ぶ楓の木々。取り付けてある容器には、甘いメープルシロップが2cmほど溜まっていた。興味をそそられていたのは、私だけじゃなかった。
迷わず指を突っ込み舐めようとした私は、いつの間にか野生児の様になっていた。琥珀色のそれはとても甘く、蕩けそうになった。それを見たリヒトに、指先に付いた残りのシロップを舐められた。
ゾクリとする、その行為についリヒトを見てしまった。ペロッと舌なめずりずるリヒト。見たことを後悔した時には遅かった。リヒトがシロップを綺麗に舐めとったから。
「ん、美味しい。想像が広がるなぁ。」
私の頭の中では、妄想が広がりますが・・・。そして、シロップもしっかり追加されました。去年のローヤルゼリーを見せると大変なことに。