第76章 明白な拒絶
「蒼・・・言い過ぎなんじゃ。」
「いいんだよ。父さんにも母さんにも話してある。身内として正せるところはそうして来た。でも、それを拒否したのはこいつだ。僕は・・・身内という前に、一人の人間なんだよ。それに、何より莉緖に関わらせたくない。」
困ったように笑う蒼。理玖からも、似た様な苦言を発した事は聞いていた。今までなら、昔馴染みだから普通に接して来ていた理玖。それも、今は完全は拒絶中らしい。
「行こう。」
蒼に手を引かれ、その場から立ち去った。
暫くの間、無言のまま歩き続ける。そして、不意に蒼が立ち止まった。
「理玖・・・。」
「何って顔してんだよ、蒼。」
「言い慣れない事を言ったからかな。でも、自分で決めた事だから。」
やはり、蒼の眉は八の字のまま。酷く疲れた顔をしていた。
「莉緖も驚いたよな。でも、蒼の決心理解してやれ。」
「理玖・・・。でも、どうしてこうなっちゃったんだろう?切っ掛けが思い出せないから・・・。」
「ああいう性格だから、周りに人が近付かない。だから、余計に身内に執着した。その結果だ。」
確かに、街中で見掛けてもいつも一人だった気がする。でも、その理由が本人の関わり方だった?
「承認欲求が昔から強かったんだ。それに、マウント取るところもあって・・・それで、周りから距離を置かれてる。直せと言って来たんだけど、変わらなかったんだ。」
「そうだったんだ。」
私は最初から嫌われていたから、そう関わることが無かった。でも、少し心が痛い。
「変に気を掛けるなよ?共倒れにされるぞ。」
「理玖、そんな言い方。」
「俺に告白して来て、それに便乗して身内への暴言だぞ?許容できるわけないだろう。」
そう言われると、もう何も言えない。
「蒼は実家も出て一人暮らしだし、そう加耶とも顔を合わせることは無い。あぁ、それと報告。俺に彼女が出来た。」
「「おめでとう!!」」
「ホント、お前たちこんな時までハモるなんて。でも、ありがとな。」
笑った顔を見て、ゲームの中のアサドを思い出した。そう言えば、ぶっきら棒だけど優しいところは似ているかもしれない。
「散々、すれ違って来たんだ。これからは、自分たちの幸せのことだけを考えろ。いいな?」
私は蒼と顔を見合わせて、頷いた。