第8章 農業生活八日目
どうやら、寝過ごしたらしい。隣りにリヒトはいなかった。急に不安になって、手早く身支度してはキッチンへ向かった。そこには、いつものようにリヒトがいた。
「おはよう。今日もいい天気だよ。っ!!莉亜?」
爽やかさ満載のリヒトに、私は抱き着いた。手にしていたお箸を置く音が、背後に聞こえる、そして、リヒトの腕が私の背に回された。
「ねぇ、どんなご褒美?」
そのリヒトの言葉に、ハッと我に返る私。そっと離れようとしたけれど、しっかりとホールドされてしまっていた。
「莉亜、おはようのキスがまだだったね?」
今、リヒトの顔を見たら羞恥で・・・羞恥で・・・でも、拒めなかった。ねぇ!?今、朝だよ?何、この激しいキスっ!!苦しくなってリヒトの背を叩くと、やっと離れた唇。
「ごめん、つい夢中になっちゃった。」
全然、悪びれてない。
「カミルが来るのはお昼からだから、仕事が終わったら愛を育もう。楽しみにしてて。」
あ、愛って・・・育むって何?
恥ずかしく思う中、サンドイッチをモグモグ。やっぱり美味しい。つい、顔が綻ぶ。そして、ハム美味。シャキシャキの生野菜も最高です。最後に卵スープを飲んでお仕舞い。
「今日はお店に使う野菜を選ぶ?下拵えするんだよね。後、他に必要なもの書き出してくれる?」
「それなら、用意したよ。」
ポケットから、メモを取り出し私に見せてくれた。それに目を走らせ、頭の中で想像する。そう言えば、ワインも途中で試飲終わっちゃったし・・・。
メインとして考えられているのは、一般的な肉・魚。生ものから加工品まで、事細かく書かれていた。私より、ウチの在庫に詳しい気がする。
そんなことを思っていると、リヒトが私の隣りに腰を下ろした。距離はゼロ。不愉快さも不快さも感じないのは、リヒトだからか?
「どうかな?」
「うん、大丈夫。後はワインだね。」
「カミルも同伴させてもいい?カミルって、ああ見えて甘党なんだよね。本人は隠している様だけど。」
そ、そうなんだ。覚えておこう。リヒトは、大人の味が好きだよね。苦いのも辛いのも。何気にジッとリヒトを見ていると、顔が近付き触れた唇。
「っ!?リ、リヒトっ。」
「えっ?僕の顔を見てるから、キスしていいのかと思って。」
そんなこと言われたら、顔が見られなくなるのですけど?