第75章 春十七日
「まぁ、結果は始まる前から明白だったけどね。」
加耶はフラれたらしい。それも、こっぴどく拒否の言葉を浴びせられたそうだ。
「身内だけど、自業自得だよ。幾ら、僕が莉緖を虐めるなと言っても止めなかったんだから。」
今でも思い出すと、苦しくなるくらいの出来事だった。顔を合わせば、明白に攻撃されて来たのだから。
「それに、理玖には想い人がいるし。」
「そうなの?」
「これはオフレコで。相手は凄く優しくていい子だよ。」
誰かは教えてくれなかったけれど、どうやら両想いらしい。
「ひょっとして、私が理玖の行動を制限してた?」
「その事なら、僕も同罪かな。何せ、僕が莉緖を守る様にお願いしたから。」
「どうして?」
「理玖は、莉緖の相手は僕ならいいって言ってくれてたんだ。でも、僕は勇気が無かった。だから・・・僕が勇気が出るまで待ってくれていたんだと思う。だって、二年前の時に結果は同じだって言われたから。」
理玖は蒼に、私のことは諦められないと言ったらしい。現に今こうして、私の目の前にいる。
「理玖の言う通りだった。僕は莉緖しか想えなかった。二年掛かってしまったけれど、ちゃんと自分の気持ちが分かったから勇気を出すことにした。」
今までと変わらない優しい笑顔。私は辛くて突き放したのに、蒼はあの頃のままだった。
「もう一度言うよ。好きだよ、莉緖。」
「わ、私は・・・。」
そこで、ゲームの世界を思い出した。ゲームの中で出会ったアオイは今目の前にいる蒼と同一人物?
「莉緖が僕の事が嫌いだと言うなら甘んじて受け入れる。でも、そうでないなら・・・少しずつでいい、僕との時間を作って欲しい。次は間違わない様にしたいから。」
蒼の顔がアオイと重なって見えた。
「私を・・・守ってくれる?」
「うん、約束する。」
「・・・蒼のこと、嫌いじゃない。でも、何もかもが無かった事には出来ない。だから・・・行動で示してくれる?」
「あ、ありがとうっ!!!」
蒼の笑顔は、とても嬉しそうで幸せそうに見えた。
「こ、恋人だって思っていい?」
蒼の目が丸くなった。そして、次の瞬間、真っ赤になった。
「何これ、僕の理性試されてる?こんな事言われて否定なんて出来る訳ないよ。むしろ、喜んでだ。あぁ、僕の彼女が可愛くて辛い。でも・・・うん、僕が莉緖を守る。約束だ。」