第75章 春十七日
この後、理玖に報告した。理玖の反応は、至極普通だった。
「莉緖の警戒心、最初から無かったのは蒼だけだったからその選択は想像通りだ。でも、蒼。次は無いからな?」
兄らしい一面を見せてくれた。
この日、私たちは二年の月日を埋めるかの様にたくさん話した。そして、あの時、私の部屋に案内したのが理玖だと知らされた。
現実の蒼は、ゲームのアオイと同じく優しい。恥ずかしい事に、私の事がどれだけ好きか話して聞かせてくれた。
あのままの生活しかしていなかったら、こんな風に馴染めていなかったかもしれない。そんな事を思いつつ、ゲームの話しを蒼に聞いてみた。
「理玖から、貰ったんだ。嬉しかったよ、莉緖に会えて。僕の記憶が戻ったのは最近だったけど、本当に幸せだった。」
「じ、じゃあ、あの・・・。」
体の関係の時は、蒼だったってこと?
「大丈夫だよ。そんなに急いでがっついたりしないから。莉緖が僕にちゃんと堕ちたら、もっと深く愛してあげる。」
ゲームの中で聞いたセリフと同じだ。
「一先ず、たくさんデートして話しをしよう。会う度に、好きだって伝えるから楽しみにしてて。」
あぁ、本当に同一人物だ。そう思った。
「お手柔らかにお願いします。」
「どうして敬語なの。でも、本当に莉緖って可愛い。好きだよ、大好きだ。」
まだまだ言いそうだったので、口を手で塞いでおいた。
その手を掴まれ、手の甲にキスされる。
「この頬が赤いのは、僕のせいだと思うと感慨深いな。もう・・・離してあげられないと思うから覚悟しててね。大丈夫、僕の愛情全て莉緖だけのものだから。」
こんな恥ずかしいセリフを吐かれても嫌ではないと思うのは、きっと、私も蒼に気を許している証拠なのだろう。
二年前より少し高くなった目線だったけれど、その表情はあの頃と同じままで安心した。
私も頑張ろう。自分で決めたんだから、私も戦おう。あの時みたいに泣いて逃げない様に。