第72章 春十四日 R18
「ア、アオイは大丈夫なの?」
震えた声でアオイに声を掛ければ、いつもの穏やかな返答が来てホッとした。
やがて、ジェイクが茂みの中から連行したのは・・・全身ピンク色のあの人だった。その後から、アオイも現れた。
「アオイ、怪我はない?」
「大丈夫だよ。」
そう言われても不安は拭えず、アオイの身体をあちこちペタペタと触る。そして、何処にも怪我が無い様で安堵の息を吐いた。
「良かった・・・。」
「心配掛けてごめん。でも、経験者じゃないなら僕は対処出来るから。」
優男風に見えて、いい筋肉付いているし・・・って、思い出しちゃった。アオイの立派な腹筋。
「莉緖、少し早いけど帰ろうか。」
「うん。」
帰る中、交番前を通り掛かると中から騒々しい声が聞こえて来る。ジェイクの説教する声だ。婦女暴行が目的ではなく、ただ訂正させたかっただけだったので厳重注意で終わるのかもしれない。
そのまま歩き続けていたら、急に路地に引っ張り込まれアオイにキスされる。そう言えば、イチャイチャしていたカップルがいたんだっけ。
でも、少し情緒不安定になっていた私はそんなアオイにしがみついた。意外に肉食系なのかもしれないアオイ。
あれ?何か、チクッと胸が痛い。何だろう?この痛みは。
「何か考え事?」
「えっ?」
「何を考えてるのか教えて?」
直ぐ目の前にはアオイの顔。吐息が唇に触れる距離。
「莉緖?」
「も、元カノとも・・・こんなキスしてたんだよね。」
つい、漏れてしまった言葉。アオイの目が丸くなっている。
「い、今のはナシで。忘れて。」
「まぁ、最初のウチは。否定はしない。身体の関係もあったし。」
「最初?」
「相手がそういうの好きじゃなかったから、付き合いだして半年くらい?僕も淡泊だったから気にしなかった。でも、今は無理。」
今は無理?
「可能な限り莉緖に触れていたいし、キスも体の関係も欲しい。莉緖はどう?」
「わ、私は・・・分からない。でも、アオイとのキスもハグも・・・好き。」
「今はそれでいいよ。まぁ・・・その内、僕の全てに嵌って貰うけど。」
アオイの笑顔が妖しい。
「さ、行こうか。」
手を引かれ、アオイに連れられて歩く。
「あぁ、帰ったら一緒にお風呂に入ろうね。」
とびきりのいい笑顔でそう言われた。それも、こんな往来の道の中で。