第72章 春十四日 R18
「それはそれは、面白そうな事に・・・。」
つい、心の声が漏れたアオイ。でも、ミランも同意していた。その後も、色々と話し込んでからミランは帰って行った。
「もし、誤解が誤解のまま済まなかったらどうなるんだろう?」
「最終的には、この村にはいられないかな。」
「そうなったら、買い取った畑はどうするんだろう?」
「なるようになるだろう。」
それもそうかな、なんて納得した私。当事者ではない私には、どうすることも出来ない事だ。
「もう・・・ウチには来ないよね?」
「ちゃんとシメ・・・理解して貰ったから大丈夫だよ。」
シメ・・・って言った?あんな年上の人相手に?お医者様は怒らせない様にしよう。
さて、仕切り直しして畑作業だ。少ない草を抜いたり、新しい種を蒔いたり果物を収穫したり。
気付いた時には夕方になっていて、食卓には野菜づくしの料理が並んだ。あ、そうそう。ママが言っていたハムカツも私は作ったんだよね。
とっても美味しくって、たくさん食べてた・・・主にアオイが。勿論、野菜もモリモリ食べてくれた。
そして、今日に限って夜のお散歩に出掛けた。春の夜と言うことで、夜桜鑑賞だ。村の中にある桜並木道へと出向き、アオイと夜道を歩く。
観光客がチラホラと桜を眺めていたり、桜の木に隠れてイチャイチャしていたり各々に楽しんでいる。
どんどんと奥地へと向かっていると、どこからともなく剣呑な声が聞こえて来た。茂みの奥にでもいるのだろうか、ハッキリとした声は聞こえて来ない。
「莉緖、ここで待ってて。絶対、一人で何処にも行かない様に。分かった?」
「うん。分かった。」
アオイは茂みの中に入って行けば、剣呑な声は止まり次の瞬間鈍い大きな音がした。そして、茂みの中から飛び出して来たのは初めて目にした女の子。
泣き腫らした顔をしては、怯えたまま走り去って行った。私がいることは気付かなかった様だ。
「莉緖、いるよね?」
「う、うん、大丈夫?」
「ジェイクさん、呼んで来てくれる?」
「わ、分かった!!」
交番までは近い。私は直ぐにジェイクを探しに向かった。交番には走って五分程度。丁度、見回りに出ようとしていたらしく直ぐに来てくれた。
元の場所に戻ると、アオイは私は茂みの中には来ない様にと言われた。きっと、誰かを捕縛しているのかもしれない。