第69章 春十一日
でも・・・
「アオイ、キスマークはダメ。は、恥ずかしいから。」
「心配なんだけど。」
「えっ?心配?」
「そう、心配。いつどこに悪いオオカミがいるやもしれない。だからその為の牽制になればいいなって。」
全然、悪びれた様子がない。
「僕を堕とした責任、取ってくれるよね?」
眩しっ!!?何っていい笑顔。じゃなかった。危うく、丸め込まれるところだった。
「・・・見えるところは恥ずかしいの。」
「・・・分かった。じゃあ、見えないところで我慢する。」
違うっ!!そう言いたかったのに、アオイの切なげな目を見て言葉を飲み込んでしまった意気地のない私。もう、丸め込まれてる。
「僕の不安、癒してくれるよね?」
「う、うん。」
「あぁ、そうだ。僕は見えるところでもOKだから。それに、一つだけじゃなくたくさん付けてくれてもいいよ。キスマーク♡」
キスマークの後に♡マークが見えた気がする。
「そ、それは・・・。」
アオイが私の手を取り、アオイの首筋から鎖骨に触れさせられた。何これ、この甘い空間。
「今まで甘えた事なんかして来なかったから、加減が分からないけど・・・嫌なら嫌だと言って?莉緖に無理強いはしないから。」
そんな事、私をしっかりホールドしたままで言われても。って、私が抱き締めて欲しいって言ったんだった。
「名残惜しいけど、作業もあるから行こうか。」
「う、うん。」
「じゃあ、今日もよろしく。」
額にキスをしては、部屋から出て行ったアオイ。
「甘くて溶けちゃいそう・・・。アオイが甘すぎて辛い。」
両手で顔を覆いながら、思わず呟いてしまう。このままでは、きっと色んなことがなし崩しになりそう。でも・・・。
私だって、かなりアオイに傾倒し堕とされている自覚はある。それに、所有を主張していいだなんて。
その後の朝食作りや畑仕事は、アオイも付き合ってくれて傍にいてくれる。穏やかで優しくて、春の木漏れ日・・・いや、初夏?くらいの熱気を感じる。
そろそろ、新しく種を蒔く時期だ。そして、私は更に高濃度の肥料も合わせて蒔いた。その結果が、とんでもないことになるのを目の当たりにするのが数日後のこと。
後になって、ママからその話しを聞いたなぁなんてことを思い出して苦笑いしたのだけど。